国内

訪日外国人が増えたのは、日本が「格安天国」だからではないか

訪日外国人は5年で3倍となった(時事通信フォト)

 街で見掛ける外国人の数は増えた。観光立国というスローガンはそれなりに実を結んでいるように思える。これでいいのか。コラムニストのオバタカズユキ氏がそこはかとない「違和感」について考えた。

 * * *
 次の時代の日本の有力産業として観光業があげられている。実際、訪日観光客数は2012年から増加が続いていて、2015年にはインバウンド(海外から国内へ)がアウトバウンド(国内から海外へ)を逆転。最新統計の2018年には、3100万人超の外国人観光客が訪れている。

 これからもまだまだ進むであろう、観光地化する日本。自分の国に世界中から人が集まってくることは、それだけ文化なり社会なりにいい意味で興味を持たれているからで、喜ばしい話である。だが、その一方で喜んでばかりいられない側面もあるのでは、と思っている。

 筆者の地元である「谷根千(谷中・根津・千駄木)」と呼ばれる東京のエリアも観光化が進み、町歩きを楽しむ外国人の姿も年々増えている。それはそれで結構なことなのだが、このところ、いささか気になる光景を目にしている。

 数年前、町内にオーストラリア資本のカフェがオープンした。元倉庫を改造、天井の高い店内はウッディな調度品で演出、散策途中のおしゃれな休憩所としてなかなかの賑わいを見せている。ただ、このお店で食事をとると結構なお値段になる。特にランチ。ワンプレートの上に自然食っぽい料理がちょこちょこ盛りつけられたものに好みのドリンクをつけたら、それだけで2000円前後になってしまう。

 味はいいのだが、ちょこちょこ盛りつけだから、たいした満足感も得られない。観光地値段だとしても高すぎるよなあ、と初めて訪れた時、けっこう驚いた。店内の他の日本人客らもランチをつつきながら、会話が止まったりしている。おそらく私と同じように、「え?あの値段でこの内容……」と戸惑っていたのだと思う。

 ところが、だ。この店には外国人観光客、特に白人のお客さんが多いのだが、彼らは見るからにリラックスしている。メニューを見つめることもなく、思い思いに料理やドリンクやデザートをオーダーし、ゆったりと椅子に腰かけて談笑などしている。

 この違いは何なんだ。たまたまそういうシチュエーションの時に入店してしまったからかと、その後も何度か再訪した。が、いつも日本人客は縮こまっていて、外国人客がのびのびリラックスだ。その空間に居ると微妙な気持ちになる。自分の町に居ながらにして欧米の観光地気分を味わえるというか、不意打ちで白人コンプレックスを感じることができるというか、とにかく独特な店なのだ。

 どうしてあの店で外国人客らはリラックスしているのか。理由は、思いつく限りひとつである。彼らにとって、別にお高い店ではないからだ。海外旅行好きならおわかりのように、欧米でもオーストラリアでも、ランチで2000円前後はごく普通。1000円以下、場合によってはワンコインでランチが食べられる日本のほうが特殊であり、外食における金銭感覚が我々とは違うのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン