以前、『山チャンネル』の面白さについてコラムを書いたことがある。是非、本人にも読んでもらいたいとTwitterでコラムが掲載されているURLを送った。すると「こちらサイドでの観戦ということで、嬉しいです」と山里からリプライ。なんだか嬉しかった。
僕は笑いのファンだが、芸人のファンではない。しかし、山里は尊敬できる存在だ。さも意味ありげなことを言って、お茶を濁す芸人も多いなか、山里は一切の妥協をしない。どんな番組でも明確な笑いを獲得する(特に『TBS60年の貴重映像を大公開~もう見られない世界・幻の瞬間!~』での立ち回りはスゴかった)。
自分発の言葉で、もしくは相手の言葉を受け、スタジオも視聴者も破顔させる。笑いに対して、逃げも隠れもしない態度には畏怖の念すら覚える。
首尾一貫した考え方も尊敬できた。2018年1月に発覚した盟友・若林正恭(オードリー)と南沢奈央の熱愛。多くの芸能人が祝福する中、山里だけはラジオで「おかしいって!」と息巻く。同調圧力に屈しないエネルギーを持っていた。
『山チャンネル』における批評にも通ずるが、山里は「他人の幸せなんて面白くもない」と常に負け犬界のボス犬として吠え続けた。その代償として幸せは拒否。名声、収入を得るのは仕方ない。ただ、女性関係だけはおざなりだという状況に自ら追い込む。ここまで仕事にストイックな人はそういない。
今年5月、Netflixで『テラスハウス』の新シリーズが配信された。もちろん『山チャンネル』も同時にスタートを切った。
現在の『山チャンネル』では「女の人が苦手」と語る男性メンバーについて言及される機会が多い。当初、山里は「僕は経験者だから彼は応援したい」と暖かな視線を送っていた。しかし、VTRに映される対女性コミュニケーションの達者っぷり。疑念を感じた山里は『山チャンネル』vol.3にて「私、一番許せませんよ。童貞気取って、お盛んな人」とついに牙を剥いた。続けて「今後、女性苦手設定を崩すことがあればD.T.P(童貞ポリス)署長の私が本腰を入れて動きますからね!」と眼光鋭くカメラ目線。山里はこういった安易な嘘を嫌う。「今回も見事だなぁ!」と唸りつつ、僕もD.T.P視点で男性メンバーを追いかけようと誓った。
この動画が配信されたのは5月28日、それから8日後に結婚が発表された。
「山里署長、D.T.Pの僕は貴方を逮捕しなければならない……」
長年、私生活での不遇を笑いのネタにしてきたのに女優と結婚するなんて、それこそ貴方が言っていた“一番許せない人”と同じ、いやそれよりも酷いじゃないですか。“非モテ気取って、蒼井優と結婚する人”、D.T.P署長の貴方は許せますか?
もし他の芸人が同じことをしたら、貴方は嫉妬に狂ったはずだ。夜空にきらめく星よりも多い罵詈フレーズを用い、懲らしめただろう。もちろん、笑いを込めつつ……。
当然、山里本人はこういった矛盾に気付いている。ゆえに、交際2ヶ月という早さで結婚に至ったのだと僕は考える。ファンに対して、嘘をつく時間を1分1秒でも減らしたかったのだろう。芸能人の交際は隠されるが、結婚となれば公表できる。病的なほどにフェアさを求める貴方はこういった選択を取った。