受診することで運転意識への変化も現われるという。
「受診前は『運転に問題はない』という人が大多数ですが、受診後は『記憶が苦手』『標識を見る余裕がない』といった意識の変化が見られ、『遠出はしない』『車間距離を空ける』『速度を出さない』と安全運転に目覚めることが多い」(沖田氏)
費用は、保険適用前だと初診料、認知機能検査が約4万円。リハビリは月3回のケースで約3万円だ。
「保険が適用される病気の治療と合わせることで検査とリハビリ費用の自己負担を1~3割に抑えています。ただ、現状は単純に“認知症が疑われる”だけでは保険は適用されません」
朴医師はそう語った上でこの『自動車運転外来』こそ、「長寿国・日本が世界のお手本になるために必要だ」と続ける。
「検査とリハビリには特殊な医療設備だけでなく、時間も手間もかかります。これが保険診療となれば、全国の病院や自治体も参入しやすくなる。将来的に脳検査を義務付ける体制ができれば、認知機能低下の特徴ごとに『一般道だけ運転を認める』『夜の運転は禁止する』など、用途限定の免許制度を導入することもできるでしょう」
朴医師は2018年から県内の田野町で3年間にわたる調査研究を始めた。
「田野町の高齢化率は40%を超え、20年後の日本の高齢化率に近い地域です。免許返納に至る過程にある脳の状態を追跡して調べることで、運転寿命を延ばすことに貢献できると考えています」(同前)
人生100年時代の「運転」をどう考えるか。そこには様々な可能性がある。
※週刊ポスト2019年7月5日号