その理由は、現在のテレビ局にとって日曜夜の番組はフラッグシップコンテンツ(局を代表するもの)だから。幅広い年代の視聴者に見てもらうチャンスが最も大きい時間帯であり、視聴率を稼ぐ上での生命線とも言えます。
ネットの普及をはじめ、エンタメやライフスタイルが多様化したことで、人々が家でじっくりテレビを見る時間が減る中、在宅率の高い日曜夜は最大のチャンス。子どもから大人まで幅広い年代が見やすい番組がそろっているのはそのためであり、視聴者にとっても「1時間単位で見たい番組を選べる」というかつてのわかりやすい状態に戻りました。
その効果は視聴率にも表れ、日本テレビとテレビ朝日が成果を収めているほか、TBSとフジテレビも以前より上昇。つまり、各局の視聴率争いではなく、テレビ全体の視聴者数や満足度を上げているのです。
もう1つ大きいのは、日曜夜の番組を成功させれば、他の曜日に新たな挑戦がしやすくなること。一時期、視聴者から「どの曜日も同じような番組ばかり」という批判がヒートアップしていましたが、徐々にオリジナリティのある番組が増え、テレビ本来の魅力である多様性が再び生まれつつあります。
ただ、テレビ局が戻るべきは、「全ての曜日が毎週1時間の番組になる」という本来の姿。そもそも、わずか数分のネット動画に慣れた人々、特に10~30代の男女に「2時間超の番組を見続けてほしい」というのは至難の技であり、その意味で日曜夜の変化は「テレビが正しい方向に戻っている」と言えるのです。
制作費やスケジュールの問題などで、日曜以外の曜日が変わるのは、まだまだ難しいところがありますが、この先2時間特番がほぼ改編期だけになったとき、「きっかけは『ポツンと一軒家』の成功だった」と、その功績が称えられる日が来るかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。