「TCH(上下歯列接触癖)によって起こります。これは、無意識のうちに上下の歯を長時間接触させてしまう癖のことです。
上下の歯は離れているのが正常です。しかし、上下の歯が接触することで『側頭筋』と『咬筋』という2つの噛むための筋肉が緊張してしまいます。これらの筋肉の緊張状態が長く続くと、顎関節症を発症し、痛みが生じたり異音が鳴ったりするようになる。上下の歯が軽く触れ合うだけでもこれらの症状は起こりますから、当然、歯を食いしばってしまうと症状は悪化しやすくなります」
これまでは、あごのこりの主な原因は「咬み合わせ」だとされていた。そのため、マウスピースを用いた「咬み合わせ治療」を勧める歯科医が少なくなかった。
「しかし、咬み合わせを治してもあごの痛みが消えないどころか、かえって悪化するケースが少なくなかった。そこで私は、500人以上の顎関節症患者を集めてその原因を分析してみたところ、咬み合わせではなくTCHが原因の大半を占めるという結論に辿り着いたのです。
この結果は2006年に発表し、今や欧米にも浸透しつつあります。しかし日本では、歯科医であっても顎関節症の専門家でなければ、TCHが原因だということを知らないのが現状です」
※週刊ポスト2019年7月12日号