ビジネス

カルピス100周年 モンゴルの草原で語り継がれる誕生秘話

国民的飲料はモンゴルに誕生のきっかけがあった(100周年新CM発表会。時事通信フォト)

国民的飲料はモンゴルに誕生のきっかけがあった(100周年新CM発表会。時事通信フォト)

 2019年7月7日、日本初の乳酸菌飲料カルピスは100回目の誕生日を迎えた。大正、昭和、平成、そして令和と時代が変わっても愛される国民飲料であるが、そのルーツは意外なほど知られていない。『カルピスをつくった男 三島海雲』著者の山川徹氏が、取材のために誕生の地・モンゴルを訪れた際のエピソードを綴った。

 * * *
 草原で、1本の連絡を待っていた。

 2016年6月下旬、私はカルピスのルーツを辿り、中国の内モンゴル自治区南東部のヘシクテン旗にいた。旅の途中に知り合ったモンゴル人歴史学者が、カルピス誕生の鍵を握る一族の末裔を知っているという。

 紹介されたのが、遊牧を営む86歳のボインイブゲルだった。白いヒゲを蓄えた彼は、孫が暮らす集合住宅で待っていた。

「私は三島さんに直接会ったことはありません。でも曾祖母や使用人が幼い私にまるで昔話を語るように、三島さんの思い出を話してくれました。曾祖父とはまるで兄弟のように仲がよかった。彼はたくさんの遊牧民に愛された人だったのです」

 三島とは、のちのカルピスの、いや日本における乳酸菌飲料の父となる三島海雲である。

 ダイニングの壁には古い写真が貼られていた。そのなかに100年以上前、三島がモンゴル貴族と撮影されたとされる新聞記事の切り抜きもある。

 三島が中国大陸にわたったのは、日露戦争前の1902年のことである。

 北京の学校で日本語教師として教壇に立ったあと、彼は日本の雑貨などを扱う会社を立ち上げた。ちょうどそのころ日露戦争が勃発する。日本の軍馬不足を知った三島は、北京の北方に広がる草原に目を付けた。そこが、当時、正確な地図もつくられていなかったモンゴル高原だった。

軍馬の調達で草原を旅した三島は、1つの疑問に導かれて北京とモンゴル高原を行き来しはじめる。

 チンギスハーンの時代、遊牧を営むモンゴル人は、なぜユーラシア大陸を席捲できたのか。彼らの生命力の源はどこにあるのか。三島は、医師に長くは生きられないと言われるほど、病弱な子どもだった。だからこそ、モンゴル人の活力にことさら魅力を感じていたのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
新キャストとして登場して存在感を放つ妻夫木聡(時事通信フォト)
『あんぱん』で朝ドラ初出演・妻夫木聡は今田美桜の“兄貴分” 宝くじCMから始まった絆、プライベートで食事も
週刊ポスト
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン