ビジネス

北海道に「ポツンと新幹線駅」 八雲町はあくまでポジティブ

北海道新幹線はやぶさ(時事通信フォト)

北海道新幹線はやぶさ(時事通信フォト)

 これから新幹線駅ができるなら、駅前に商業ビルを建てるなどの周辺整備をしようと地元が着手するのが普通だろう。ところが、北海道新幹線の新八雲駅(北海道二海郡、2031年開業予定)は、あえて何も新しく建造しない、北海道らしい絶景を楽しめる駅周辺の環境整備を行う予定だ。ライターの小川裕夫氏が、函館市と室蘭市の中間に位置する北海道酪農発祥の地・八雲町が駅からの眺めをセールスポイントにした「ポツンと新幹線駅」として独自路線を目指す狙いをレポートする。

 * * *
“夢の超特急”と謳われた新幹線が、初めて姿を現してから55年。当時の社会情勢は鉄道から自動車へのシフトが鮮明になっており、鉄道は斜陽化していた。

 そうした中、国鉄は高速鉄道に活路を見出そうとした。しかし、鉄道ファンでもある作家・阿川弘之は新幹線を「ピラミッド、万里の長城、戦艦大和と並び世界の4馬鹿になる」と酷評。鉄道ファンでさえ、鉄道の行く末を案じていた。

 しかし、蓋を開けてみれば新幹線は大成功。いまや国内のみならず、世界各国でも高速鉄道建設の機運は盛り上がっている。

 政治家の立場から新幹線建設を推進した田中角栄は、早くから「新幹線は地域開発のチャンピオン」と称賛していた。そして、田中は持論である日本列島改造を実現するため、持ち前の政治力を発揮して全国各地に新幹線を延ばすことを構想した。

 田中が「地域開発のチャンピオン」と形容したように、新幹線は地域振興に大きく寄与した。新横浜駅は駅前が一面の田んぼだったが、新幹線開業とともに開発が進み、いまやオフィスビルが立ち並ぶ大都会に変貌した。

「新幹線の停車駅なのに、駅前はまるでド田舎」と揶揄されがちな岐阜羽島駅も、実のところ駅前はそれなりのにぎわいを見せている。

 そうした新幹線による地域振興の地域開発の力に着目する政治家は後を絶たない。また、地元経済界も「新幹線の駅ができれば、わが町は活性化する!」と新幹線に強く依存している。それら新幹線信仰が、しきりに誘致活動を展開する原動力にもなっていた。

 人口減少や地方の過疎化が顕著になっている現在、地域活性化の起爆剤として新幹線に一縷の望みを託したくなる気持ちは理解できる。しかし、新幹線は万能ではない。新幹線の停車駅ができたからといって、必ず地域が活性化するわけではないのだ。

 2016年に開業した北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅は、一日の平均乗車人員が33人(2017年度)。在来線時代は一日に利用者が1人いるかいないかという状況だったから、それに比べれば大幅増といえる。

 だが、新幹線の停車駅に昇格すると、行政や周辺住民、観光関係者、地元経済界などから期待を一身に背負う。そして、それなりの施設を整備する必要に迫られる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
川崎、阿部、浅井、小林
〈トリプルボギー不倫騒動〉渦中のプロ2人が“復活劇”も最終日にあわやのニアミス
NEWSポストセブン
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン