芸能

さくらももこ『コジコジ』 YouTubeでもズレた魅力を発揮

『コジコジ』がYouTuberに(イラスト/ヨシムラヒロム)

(イラスト/ヨシムラヒロム)

 アニメーションのキャラクターが、YouTuberになった。ありそうでなかったYouTuber進出を現実にしたのが、2018年8月に亡くなった、さくらももこさんの漫画を原作として1997年から2年間放送されたアニメ『コジコジ』の主人公、コジコジと同級生の次郎だ。YouTuberになったコジコジたちは、その魅力を維持できているのか、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が考えた。

 * * *
『コジコジ』はさくらももこのセンスが爆発した作品である。それゆえ『ちびまる子ちゃん』以上に濃いファンが多い。2017年11月にはアニメ放送20周年を祝したYouTubeアカウント『コジコジチャンネル』を開設。現在に至るまで、定期的に動画配信を続けている。結果、2019年7月には登録者数5万人を突破。そして2019年7月18日、20年ぶりの新作「コジコジ、次郎、YouTuberになる?」が公開された。

 早速、再生してみる。YouTubeの画面に登場した主人公コジコジと友達の次郎、おぉ感慨深い。20年前よりも画質が良くなっているが、キャラクターデザインは同じ。雲、山、木々で構成されるおなじみの背景もたまらない。

 過ぎ去った年月を感じさせない軽さで「いやぁ、みんな久しぶり」と語りかけてくる次郎。感傷的になっているのは僕だけ、劇中2人はいたって軽やかである。3分半の劇中、時間いっぱいに繰り広げられるのは不毛なやりとり。YouTuberと名乗ってはいるもののコジコジはずっとコジコジだった。

 続いて、次郎は「YouTubeを始めるまでは何をしていましたか?」と視聴者の質問を読み上げる。天然キャラのコジコジ、すぐに回答はしない。「うーんとねぇー」と言いつつ、右往左往と話をズラしていく。これこれ! 2人の淡々としたやりとりに思わずやけてしまう。20年前に観ていたアニメでもコジコジは次郎を終始いなしていた。

 次郎は流行りものが好きな俗物的なキャラクター(当時はコーネリアスと電気グルーヴにハマっていた)。フワフワしているコジコジに「なるべく早く答えてくれよ! ここまで来るのに結構時間かかちゃったんだから!」とツッコむ。彼はキャラクターなのにも関わらず、YouTubeの動画が長尺になればなるほど再生数が増えにくくなることを知っているのだ。

「第1回はここまで、次回をお楽しみに!」と動画は終わった。YouTuberコジコジには続きがあるようだ、ファンとしては嬉しい展開である。

 過去の名作アニメがYouTubeで復活し、新作オリジナルを発表する試みは、僕が知る限り『コジコジ』が初めて。有名キャラクターがYouTuberになることに新たな動画配信の可能性を感じた。

 人気YouTuberと比べれば、コジコジと次郎のやりとりは派手さに欠ける。しかし、動画の世界観は誰よりもオリジナル。アニメキャラクターなのにも関わらず、ズレる2人のかけあいも良い。オードリーのズレ漫才に似た空気感といえばいいのだろうか。ともすればアニメファンだけではなく、お笑いファンも取り込めると思う。また、YouTuber化といった試みはキャラクターに新鮮味を与えている。何事にもいえるが、更新し続けないとサバイブできない。新たな挑戦はキャラクターの商品価値の延命にも繋がる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン