宇垣美里さんは神戸出身
宇垣:やっぱり大丸さんがモデルなんですね。なんか、うれしい。私も神戸育ちなので、地元の百貨店といえば、ずっと大丸でした。
高殿:もちろん最初から、詳しいお話を聞くことはできません。何度もしつこく足を運んでいるうちに、少しずつ教えてくださるようになって、こうじゃないか、ああじゃないかと手探りしながら書いたのが1巻です。取材先は大丸さんだけじゃなくて、三越をお辞めになったカリスマ外商員の方や、そごうや伊勢丹などで働いていらっしゃる方も個別にリサーチして、混ぜて書いています。
宇垣:義母の財産を当てに脛をかじる嫁たちやワケありっぽいセレブなども登場して、顧客の顔ぶれもバラエティに富んでいます。ヤクザさんが出てくるのも神戸らしいといえば神戸らしい(笑)。
高殿:それでも、さすがに外商員の方を直接取材するのは難しい。そこで外商部の顧客である芦屋のリッチな方にコネクションを持っている人は誰だろうと考えました。いろいろリサーチする中で、不動産業の方ならご存じじゃないかと。たまたま、ある不動産会社の社長さんとご縁が出来て、お話を伺わせていただきました。もちろんプライバシーに関わるようなことはお聞かせ頂けませんが、漏れ聞こえてくるエピソードの断片をジグソーパズルみたいに組み合わせていくうちに、なんとなく芦屋のセレブとお付き合いする外商の世界ってこうなんじゃないかと見えてきたんです。一度だけ、外商さんに同行させていただいたことがあるのですが、アタッシュケースに宝石がごろごろ入っていて、その総額がなんと10億円。持ってみますか? どうぞ、どうぞ、って無造作にケースを渡されても…小市民なもんで、震えちゃいました(笑)。
宇垣:私が外商員だったら、盗まれるんじゃないかと心配で、アタッシュケースをぎゅっと抱きかかえて歩きそう。挙動不審で怪しい人だと思われちゃうかも(笑)。
高殿:主人公の静緒は、男社会の外商部に配属されるけれど、それでも自分を曲げずに正面突破で突き進んでいきます。なんとなく宇垣さんに似ているのかなと思いました。
宇垣:バリバリ頑張っている静緒の姿は、すごく励みになりましたし、恋愛が二の次で何が悪いの?という生き方には、ちょっと背中を押してもらいました。
高殿:やっぱり、そうなんだ。
宇垣:私はこれまでの人生の中で、女性に嫌がらせされるより、男性に嫌がらせされることのほうが圧倒的に多かったんです。女性はネチネチしていて陰湿だって言われるけれど、それは違うと声を大にして言いたい。マスコミも男性中心の社会なので、古い体質のところもあるけれど、「お茶くみをしろ」だとか「セクハラなんてうまくうけながせばいい」という風潮に対しては、最初の段階から「NO」と大きな声で言っていました。それが良かったのか悪かったのかはわかりませんが、これからはもっと私のような女性が増えてくるでしょうし、そうじゃないといけない。いなすんじゃなくて、ガチンコ勝負したほうが良くない?って思います。静緒のようにね。