ダムは“半永久”で、雨水は“タダ”だから、建設に少々お金がかかっても長期的には必ずプラスになるという。最後に、第三の「発電整備のないダムに発電設備をつける」というのはどういうことか。
「今まで発電に利用してこなかった治水や利水、砂防などを目的とした既存ダムに、穴を開けて発電施設を設置するということです。こうした施工例は実際にあります」
これら3つの方策を実施すれば、水力は日本の電力需要の2割以上を賄えるようになるという。実際に話を聞くと、この“竹村理論”には整合性があるように思えるが、専門家はどう見るか。前出の安井至氏はこういう。
「私も竹村氏の著書を読みましたが、理論に穴は見つけられませんでした。唯一、気になったのは、緊急時の放流です。昨年7月の西日本豪雨では、愛媛県・肱川のダムで緊急放流をして肱川が氾濫し、大きな被害が出ました。農繁期で農業用水が必要だったので事前放流を躊躇したとされていて、想定外の豪雨や人為的なミスで事故は起こりうると思う。ただ、これから日本の人口は減少していくので、人がほとんど住んでいない地域のダムから導入していくことは可能でしょう。
竹村氏は元国交省の河川局長ですので、国交省の利権を代弁している気がしないでもありませんが(笑い)、仮にそうだとしても、水力を2倍にできるというのは極めて魅力的で、ぜひ進めるべきだと思います」
日本列島は中心部に山岳地帯が広がり、河川は急峻で、雨量も多い。エネルギー資源がほとんど産出しない日本で、唯一豊富といえるのが“水のエネルギー”であり、もう限界といわれて放置してきた水力発電を再生することは大いに検討されるべきことであるように思う。
●取材・文/清水典之(フリーライター)