芸能

月9絶好調の陰にテレ朝、TBS、朝ドラのトリプル必勝エッセンス

『監察医』朝顔に出演する時任三郎、上野樹里、加藤柚凪ちゃん(左から)

 月9がついに復活か――。上野樹里が新米法医学者役で主演するドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)が視聴率をぐんぐん伸ばしている。その背景を探ってみると、ある必勝エッセンスがあった。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 月9ドラマ『監察医 朝顔』が絶好調です。19日放送の第6話が最高記録を更新する14.4%を記録したほか、全話平均視聴率でも夏ドラマトップが濃厚になってきました。これはシリーズ続編の『HERO』『ガリレオ』『コード・ブルー』を除く新作では、2012年春の『鍵のかかった部屋』以来、約7年ぶりの好結果であり、局内は湧いていると聞きました。

 ただ、視聴率なら昨夏の『絶対零度』から、その後の『SUITS/スーツ』『トレース』『ラジエーションハウス』と4作連続で2桁を獲得していましたが、今作は数字だけでなく評判も最高レベル。ネット上には脚本、演出、キャスティング、演技、など、あらゆる項目での称賛があふれているのです。

 録画機器やITデバイスの発達で、視聴率につながるリアルタイム視聴をするのは中高年層が大半となり、一方でネット上にコメントするメインの年齢層は中高年以下と、異なる両方を獲得するのは至難の技。それだけに『監察医 朝顔』の好調ぶりにあらためて注目が集まり、「今度こそ月9の本格的な復活ではないか?」という声もあがっています。

 絶好調の秘けつはどこにあるのでしょうか。また、今後の月9はどんなものが求められているのでしょうか。

◆朝ドラに通じる家族円満なシーン

 ここまでの物語をもとに成功の理由を分析していくと、浮かび上がってきたのは、「『監察医 朝顔』がテレビ朝日、TBS、NHK朝ドラの必勝エッセンスを盛り込んでいる」こと。結果的に極めて計算されたマーケティングに基づく作品だったのです。

 まずテレビ朝日の必勝エッセンスは、「刑事、医療、法医学というジャンルに絞り、命をめぐる一話完結型にして、視聴率につながりやすい中高年層の支持を得る」というもの。さらに月9は、キャストとスタッフの年齢層をテレビ朝日より下げることで差別化し、中高年以下の視聴者層にもリーチしようとしています。

 次に、TBSの必勝エッセンスは、「連ドラを2~3章に分けて複数のクライマックスを作り、視聴者を飽きさせない」という構成。サブタイトルや次回予告などに「第1章完結!」「最終章スタート」などの劇的な印象を加えることで中だるみを防ぎ、中盤以降も視聴者を減らさないという効果を得ています。『監察医 朝顔』も、朝顔(上野樹里)の結婚を描いた第5話で第一章を終わらせて、第6話から朝顔が母になった新章を描いています。

 最後に、NHK朝ドラの必勝エッセンスは、「家族の温かいやり取りを前面に出したホームドラマ」であること。近年の朝ドラは主人公の家族円満なものばかりになり、視聴者に癒しを与えることで成功を収め続けてきました。

『監察医 朝顔』も法医学をテーマにしながら、朝顔と、刑事の父・平(時任三郎)、東日本大震災で行方不明の母・里子(石田ひかり)、刑事の恋人・真也(風間俊介)を中心にした物語であり、現在は真也と結婚し、娘・つぐみ(加藤柚凪)を含めた家族の日常を淡々と、でもハートフルに描いています。

 また、朝ドラの必勝エッセンスとして、もう1つ挙げておきたいのは、「歴代ヒロインの〇年ぶり出演」。現在放送中の朝ドラ『なつぞら』には、現時点で12人もの歴代ヒロインが再登場して話題を集めていますが、『監察医 朝顔』も負けていません。

 石田ひかりさんは1993年の『あすなろ白書』以来26年ぶりの月9レギュラー出演、山口智子さんは1996年の『ロングバケーション』以来23年ぶりの月9出演、第7話に登場する有森也実さんも1991年の『東京ラブストーリー』以来28年ぶりの月9出演であり、往年のファンを喜ばせています。

◆仕掛け人は若き女性プロデューサー

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト