芸能

『サラメシ』真夏の“社長メシ”スペシャルに落胆した理由

番組公式HPより

 人気番組には、ならではのポイントがある。そのバランスが少しでも崩れると魅力は褪せてしまいかねない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、かねてからファンだったという番組について指摘する。

 * * *
 スタート当初は23時半~という時間帯で、ひっそりと放送されていた番組。しかしジワジワと人気が出るにつれ放送時間も徐々に早くなり、今やゴールデンタイムへ。「NHKの看板番組」の1つと言われているのが『サラメシ』(NHK総合火曜午後7時30分)です。

 ご存じの方も多いと思いますが、「サラメシ」とは「サラリーマンの昼メシ」の略。「ランチをのぞけば人生が見えてくる」を合言葉に、働く大人の昼ご飯を取材。シンプルな「昼飯」というテーマから四方八方へと映像は飛び、さまざまな仕事の現場が出現します。農家、工場、美容院、アーティスト、船乗り、特許事務所、営業事務所。新入社員からベテランまで。実にさまざまな人生模様が「昼飯」一つから見えてくるから面白い。

 この番組が突出している点を3つ挙げると……まず、シンプルなテーマ性。美味しそうに食べている人を見ると、ただそれだけで幸せな気持ちに包まれる。それがこの番組の人気の根本的な理由でしょう。

 続けて「企画力」の冴え。「昼飯」を軸に、いかに展開にしていくのか腕の見せ所です。実際、『サラメシ』の中にはいくつかのコーナーがぎゅっと詰まっています。「○○に昼が来た!」コーナーは、各仕事場の昼飯風景が映し出されるメインのパート。

 例えば金曜日にカレーうどんを食べるという職場。実は作業服を週末に洗濯するから金曜ならカレーの汁が飛んでも大丈夫とか、固有の理由が見えてきて、そこから固有の仕事の中身もわかる。さらに、会社でどんな人が働いているのか、と周辺もわかってきて「なるほどこのお仕事ゆえにこのお昼なのね」という「腑に落ちる」感がいい。まるで魔法の小箱をあけるような楽しさです。

 一方、「お弁当を見にいく」コーナーは、カメラマンが撮影するのがお定まり。仕事場で仲間たちと記念撮影。ここでは「お弁当」が鍵になります。職場のみならずその人の「家庭の色あい」がお弁当にジワリと出てくるからです。あるいは「さし飯」コーナーは、撮影スタッフがアポなしで街頭で声をかけ、さしで昼をご一緒する突撃もの。どんな何の話が飛び出すかわからない。時々、取材相手の話ではなくスタッフの悩み相談にすり替わっていたりするのも、ご愛敬。予定調和ではないドキュメントならではの楽しさです。

 そして圧巻が「あの人が愛した昼メシ」コーナー。故人となった人が愛していた店、ひいきにしていた店へ行き座っていたその場所で、好んで食べたメニューを撮影しつつ店の人が思い出を語るというしっとりとした時間。という質の違うコーナーを自在に組み合わせて30分弱の番組に編集していく。そのため毎回違うテイスト感があり、テンポもいい。まさに「企画力の勝利」と言えるでしょう。

 3つ目に、中井貴一さんのナレーションを挙げなければ。あのナレなしに番組は成り立たないくらい一体化しています。ラジオのDJのようなポップなノリで、即興的に映像に言葉をつけていく中井さん。特に前半はテンション高めで躍動感と高揚感、時におふざけ感に溢れています。

 一転して「あの人も、昼を食べた。」のコーナーになると、静かな落ち着いた口調に変化する。故人を思い出す厳かな雰囲気へと転換するメリハリが見事です。

関連記事

トピックス

多忙の中、子育てに向き合っている城島
《幸せ姿》TOKIO城島茂(54)が街中で見せたリーダーでも社長でもない“パパとしての顔”と、自宅で「嫁」「姑」と立ち向かう“困難”
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
女性アイドルグループ・道玄坂69
女性アイドルグループ「道玄坂69」がメンバーの性被害を告発 “薬物のようなものを使用”加害者とされる有名ナンパ師が反論
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン