これこそ、“テレビとネットの融合”ではないか。ライブドア社長だった堀江貴文氏がフジテレビ買収を試みた2005年前後から叫ばれ続けている長年の課題を、78歳のコメディアンがやってのけたのだ。
思い返せば、萩本欽一は素人を起用して人気者に育て上げ、『欽ドン!』では視聴者からの投稿で番組を作り上げてきた。昭和の頃から視聴者を巻き込んで一大ムーブメントを起こしてきた天才が、令和にまた動き始めた。
視聴者はテレビを見て終わりではなく、ツイッターに参加することで日々番組を楽しめる。SNSの誕生によって、一般人の関わる度合いは昭和の頃より格段に増している。
テレビは視聴者とともに作るものであり、視聴者ファーストであるべきだ──。番組を通して、“ミスター・テレビジョン”萩本欽一はそうメッセージを送りたかったのかもしれない。応援する人たちがいる限り、欽ちゃんへの“無茶振り”で始まった物語はこれからも続いていく。
●文/岡野誠:ライター・芸能研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)が話題。同書では田原が事務所を独立し、SMAPが大ブレイクした〈1994年のジャニーズ事務所〉という章を設けるなど、芸能史やアイドル史も紐解いている。9月28日、東京・下北沢本屋B&Bで元CHA-CHAの木野正人とトークイベントを開催。