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韓国「慰安婦の日」 徴用工団体同士が怒鳴り合った背景

 実は韓国大法院判決が出た徴用工裁判は、その判決で問題が解決するという類いのものではない。例えば、昨年判決を受けた日本製鉄裁判の原告は4名とごくわずかしかいない。だから彼らが賠償金を得たとしても、残された数万人にも及ぶ他の徴用工の問題は解決したことにならないのだ。逆に日韓関係を無用に悪化させる原因にしかならない。むしろ日韓基本条約に則り、正当な手続きを踏むべきだと考える被害者団体も多いのだ。

 例えば金仁成氏は韓国の大統領府である青瓦台前では、毎週“火曜日デモ”を開催し、日韓基本条約に基づく「韓国政府の補償責任」の追及を続けている。

 崔容相氏は昨年12月20日、徴用工被害者と遺族1103人(当時。現在は1800人を超える)を原告として、韓国政府を相手取り1人あたり1億ウォン(約880万円)の補償金を求める訴訟をソウル中央地裁に起こしている。崔容相氏は、『週刊ポスト』(2019年3月15日号)でこう語っていた。

「現在、民族問題研究所は被害者団体のふりをして、テレビを通じて原告探しまで行なっています。しかし、なぜ民族団体研究所の呼びかけに応じて被害者が集まらないといけないのでしょうか。彼らの方針どおりに日本企業を訴えても被害者にはひとつもプラスにならない。なぜなら日韓関係が悪化すれば日本政府や日本企業はますます頑なになるでしょう。それによって残された徴用工問題の被害者が賠償を受ける機会が潰えてしまう可能性が高くなる。一部の被害者だけが補償を受け、他は置き去りにされるという不平等が起こる」(一部要約)

 徴用工問題を訴える団体の間では当時から、徴用工裁判が日韓関係を悪化させることへの危惧があった。改めてシンポジウム当日に崔氏に話を聞くと、「このままでは被害者団体が民族問題研究所に乗っ取られてしまうと思い、抗議している」と話した。

 騒然としていた会場内だったが、日本人の矢野氏がマイクを握ったことで一旦静寂を取り戻した。矢野氏は次のような演説をした。

「1965年からの長いトンネル、民主化の闘いを超えて2018年に(徴用工裁判の)判決が出ました。あきらめず闘ったことが局面を拓いた。いまが最後の局面なのです。被害者の人権を回復する道は必ずあります。日韓関係は厳しい局面ですが、必ず理解は広がります」 しかし、続いて民族問題研究所研究員の金敏喆(キム・ミンチョル)氏がマイクを握ると、再び怒声が飛び交い始めた。

「被害者団体を分裂させたのは誰のせいだ!」

「なぜ被害者を無視する!」

 この光景が示すのは、強い不満を抱く相手が「民族問題研究所」であるということだ。民族問題研究所傘下にある太平洋戦争被害者補償推進協議会などの被害者団体は、数十人程度のメンバーしかいない少数団体だ。一方で日帝被害者報償連合会やアジア太平洋戦争犠牲者韓国被害者団体は数万人規模の被害者・遺族で構成される。少数派が徴用工補償運動をリードする歪な構造が、この対立を深刻にしているようだ。

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