◆両親に映画招待券を送り続けた息子

 京アニ人気を確立した『涼宮ハルヒの憂鬱』で演出を担当し、女子高生の日常を描いた『らき☆すた』では監督を務めた武本康弘さん(47才)も犠牲者のひとり。

「小さい頃から自慢の息子でした」と振り返るのは武本さんの父・保夫さん(76才)だ。

「とにかく素直で明るい子で、学校の成績もよかったんです。小学生の頃から絵を描くのが好きで、友達の年賀状1枚1枚にドラえもんを丁寧に描いていた。同級生はそれを楽しみにしていて、今でも宝物にしてくれる子もいるみたいです」(保夫さん・以下同)

 武本さんは就職後、京アニが制作した映画の招待券を欠かさず両親に送っていた。

「いつも家内と一緒に見に行きました。映画館は若者ばかりで場違いな気持ちにもなったけど、若い子らが息子の作った作品を楽しみに映画館に来て、喜んで見てくれるのを目の当たりにしていつも誇らしい気持ちになりました」

 日常生活の細かな描写に徹底的にこだわり、アニメの可能性を広げた武本さんは、京アニの取締役を兼ねながら数々のヒット作を手がけた。『らき☆すた』は、ファンが映画の舞台を訪れる「聖地巡礼」ブームの先駆けとなった。

 家庭では小学2年生の娘を持つよきパパだった。

 事件後、「お父さんはいつ帰ってくるの?」としきりに尋ねる孫に、保夫さんは「今は病院だよ」と答えたという。

「通夜と告別式が終わり、孫も父親が亡くなったことを理解しているようです。今は精神的なショックで、ひとりでトイレに行けなくなったと聞いています」

 原画や動画を担当し、人気作の『氷菓』や『たまこまーけっと』などの制作にかかわった宇田淳一さん(34才)も幼い娘を残して旅立った。

 職人気質の宇田さんは1枚1枚の絵をコツコツと丁寧に描き、放送後にも細かなチェックを繰り返した。現在1才の長女が生まれてからは、“娘が将来、作品を見た時に話せるようにがんばる”と夢を語っていたが、残念ながら帰らぬ人となった。

 気鋭のクリエイターとして将来を嘱望されていた西屋太志さん(37才)。

「アニメの根幹をなすキャラクターデザインを担当していて、水泳男子の肉体美を描いた『Free!』や、聴覚障害の主人公を描いた『聲の形』(こえのかたち)などの作品が高く評価されました。精鋭揃いのスタッフの中でも未来を担うとされる人材と注目されていました」(制作会社関係者)

 今年4月25日のブログで西屋さんは、劇場版『Free!』の制作に向けて、熱い期待をこう綴っていた。

《みんながどこまで行けるのか、どんな未来にたどり着くのか、自分も楽しみです。今もまた、どっぷりと『Free!』に浸かっています》

 西屋さんが楽しみにしていた未来は無残にも奪われた。

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