では、どのタイミングで“本当の”企画趣旨を伝えるのだろうか。「ドケチ」として出演させられる主婦は「テレビって嘘ばっかりじゃん」って思うのではないだろうか。そう心配していたら、結局、「ケチの度合いが弱い」という理由で、私が連絡を取っていた主婦がテレビに映ることはなかった。
「ドケチ主婦」という言葉のほうが、テレビ的に惹きがあることはわかる。企画書や取材段階では「節約主婦」と説明しておいて、放送されるときには「ドケチ主婦」にすりかえられるようなことは、かつては横行していたのかもしれない。素人出演者がそれに憤っても、反論する場もなかった。が、SNSなどで誰もが取材の内情を発信できる今、それは白日の下に晒される。
兼近の件では、番組制作スタッフが元カノに対し、どのように企画の趣旨を伝えたかの詳細は分からないが、大きな問題点のひとつは(元カノの発言が真実だとすれば)、「二股をしていたかも」ではなく、確証もないのに「二股していた」と元カノに伝えたことだろう。
私は芸能マネージャーの経験もあるが、タレントはまず企画書や台本を渡されたら、企画の趣旨や流れを理解し、多少は「大げさな演出」があることも承知の上で、スタッフが求めることに応えようと努力していた。それが芸能人である彼らの仕事だからだ。
しかし、素人となれば話は違う。制作サイドが作った企画書の内容を信じる人が多いだろう(今はテレビに対する不信感を持つ人も多くなったので、そうではないかもしれないが)。それでも、後でオンエアを見れば、番組制作サイドの嘘や不誠実はハッキリする。
スタッフ側は、制作過程でいい加減な説明はできない時代になったことを再認識すべきではないか。それと同時に、一般の方もテレビから出演を依頼されたら、「本当はどんなふうにいじられるのか」をよく確認する必要があるのかもしれない。