国際情報

香港でデモ隊を攻撃した白シャツ集団 「三合会」とは何者か

黒シャツ姿の香港デモ参加者たち(dpa/時事通信フォト)

 香港で大規模デモが発生してから3か月以上が過ぎた。この間、一部では警察との間で激しい衝突が起き、7月には、黒シャツ姿のデモ隊に「白シャツ集団」がカウンター攻撃を仕掛けるという事件も発生した。デモ隊に激しい暴力を振るった白シャツ集団とは何者なのか。歴史作家の島崎晋氏がその素性を解き明かす。

 * * *
 逃亡犯条例改正案を巡って起きた香港の騒動は、香港政府が条例案を撤回したことで一つの山を越えたようだが、黒シャツで統一したデモ隊に対して暴力を振るった白シャツ集団については記憶に新しいかと思う。彼らの素性については、「三合会」という組織のメンバーであることが報道された。では、そもそも三合会とは何者なのか。

 三合会とは日本で言う暴力団、シチリアで言うマフィアにあたる裏社会のなかの一組織。主な資金源は麻薬取引、密輸、人身売買、カジノやナイトクラブの経営、ショバ代などになる。蛇頭(スネークヘッド)と呼ばれる密航や陸路での密出国の手配も彼らの活動の一部で、1989年の天安門事件に際し、学生指導者たちの海外逃亡を手助けしたのも彼らだと言われている。目先の金銭目的ではなく、現体制がひっくり返された場合に備えての保険、あるいは先行投資としての目的もあるのだろう。

 彼ら裏社会は秘密結社に分類されることもある。中国の秘密結社と言えば、青幇(チンパン)と紅幇(ホンパン)の二大系統からなり、後者は洪門、紅門、洪幇とも呼ばれる。青幇は黄河と長江を結ぶ大運河の水運・荷役労働者の中から生まれた、仏教色を帯びた互助組織に由来する。水上輸送が大運河から海運へ移行するに伴い、上海や天津の租界に流れ込んで裏社会を仕切るようになったのだが、一方の紅幇は移民社会の中から生まれた。

 台湾の天地会、四川省の哥老会、広州から香港にかけての珠江デルタ地帯で生まれた三合会などはみな紅幇の系統に属する。名前こそ違えども始祖伝説や内規はほぼ同じだ。本来の地縁血縁から切り離された人びとが、新天地で生き抜くために疑似家族関係を結んだことに始まり、当局がこれを危険視したことから地下への潜伏を余儀なくされ、やがて結成当初から「反清復明(満州族の天下を倒し、漢民族の天下を復活させる)」を目的に結成されたかのような伝説が創作された。

 細部に多少の違いはあるが、大筋はほぼいっしょで、伝説の始まりは武術で名高い嵩山少林寺(すうざんしょうりんじ)の兄弟組織という触れ込みの、福建省にあったとされる南派少林寺にある。そこが冤罪を着せられ官軍に焼き討ちされた際、落ち延びた戦闘僧たちがたまたま明帝室の末裔に出会い、反清復明の秘密結社を組織したというものである。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン