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大阪都心にポツンと佇む秘境駅「汐見橋」 その将来性は

繁華街ナンバ至近にポツンと佇む汐見橋駅

繁華街ナンバ至近にポツンと佇む汐見橋駅

「外国人に人気の日本の観光スポット ランキング 2019」(トリップアドバイザー)で8位にランクインした「高野山 奥之院」(和歌山県高野町)への移動に欠かせない南海高野線。起点は「なんば」だと思われがちだが、路線の上では「汐見橋」となっている。汐見橋は1900年に開設された歴史をもち、繁華街ミナミに隣接した位置にありながら、一日の平均乗降客が数百にとどまるが、廃止などが検討された気配がない。というのも、1980年代から構想されている都市交通計画「なにわ筋線」の整備計画に含まれてきたからだった。大阪都心に隣接しながら独特のひなびた秘境駅のような存在感を持つ「汐見橋」について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

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 訪日外国人の増加で、南海電鉄の高野線沿線が大にぎわいを見せている。

 高野線は汐見橋駅をターミナルに、和歌山県の霊峰・高野山のアクセス路線として利用されている。今年、世界遺産への登録が決まった百舌鳥・古市古墳群のうち、仁徳天皇陵(大仙陵古墳)を含む百舌鳥古墳群も高野線の沿線にある。世界遺産登録の影響で、高野線は観光客が増加することが見込まれる。

 こうしたチャンスを取り込むべく、南海は沿線活性化に着手。11月までに高野山の麓にある九度山駅に竃を使った本格的な「おにぎりスタンド」を、高野下駅に「駅舎ホテル」を開業させると発表した。

 勢いづく高野線だが、高野山まで走る特急は“南海本線”のターミナル・難波駅から発着する。高野線がターミナルにしている汐見橋駅から高野山へ走る特急はない。それどころか、汐見橋駅を発車する電車は、すべて5駅先の岸里玉出駅までしか走らない。そこから先は、必ず乗り換えを要する。

「1993年に岸里玉出駅を高架化した際に、汐見橋駅―岸里玉出駅間の線路と岸里玉出駅と高野山までの線路を分離しました。以降、汐見橋駅を発着する電車は、岸里玉出駅までの区間を行き来するだけになっています」と説明するのは、南海電鉄総務部の広報担当者だ。

 汐見橋駅―岸里玉出駅間の線路は、実質的に高野線から切り離された。そのため、高野山へ向かう観光客は難波駅を利用する。高野線のターミナル・汐見橋駅を使うことはない。

 汐見橋駅は寂しい雰囲気が漂う。そこに、従来の多くの利用者で混雑するターミナル駅のイメージはない。実際に利用者は少なく、2018年度における汐見橋駅の一日の平均乗降人員は621人。もうひとつのターミナルになっている難波駅は、一日に25万人以上が乗降するから、比較にならないほどの大差がついている。

 そんな汐見橋駅だが、近年は利用者が少しずつ増え始めている。汐見橋駅の目の前に阪神電鉄と大阪メトロの桜川駅があり、乗り換え需要が生まれているからだ。

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