ボールを持った選手が相手と接触するとごちゃごちゃっとした人の塊(密集)ができる。そこから背番号9をつけたスクラムハーフが素早くボールを取り出し、背番号10のスタンドオフにパスをする。ボールを受け取ったスタンドオフは“攻撃の司令塔”として、別の選手にパスする、キックを蹴る、自らボールを持って走るなどのアタックを選択する。

 日本代表の攻撃の起点となる重要な10番を背負うのは、田村優選手である。

「スキルの精確さは強豪国の同じ背番号に劣りません。日本代表の戦法について、『日本にハマるかどうかより、信じるか信じないかが大切』と言い切るハートの強さも心強い。自分の頭で考えてプレーできることもジャパンの10番としての大きな強みです」(藤島氏)

 田村選手はトライ後に加点を狙うコンバージョンキックや、ペナルティキックも担当する。超満員の観衆が固唾を飲んで見守る中、勝敗を分けるキックを蹴るなんて想像するだけでドキドキするが、経験豊富な田村選手ならきっと期待に応えてくれるだろう。

 フィールドの後方や端に陣取り、味方の後方からアタックに参加したり、自陣の後ろに空いたスペースを守るのはウイングとフルバックの仕事。攻撃ではトライゲッター、防御では最後の砦となり、何かと得失点に絡むことの多いポジションだ。

 ラグビージャーナリストの小林深緑郎氏がチームの命運を託すのは松島幸太朗選手。ジンバブエ人の父親と日本人の母親を持つ松島選手は、日本人離れした身体能力を誇る。

「ほかの選手とは運動神経のレベルが違います。とくに横への動きが素晴らしく、通常ならばトライを取れないような状況でも独特の動きでトライに結びつけます。一時期はケガをしていましたが、最近は完全復調してまさにキレキレです」(小林氏)

 ウイングには50メートルを5秒8で走るスピードスターの福岡堅樹選手もいる。攻撃の“両翼”を担い、相手の防御を突破する能力に秀でた松島選手と福岡選手にボールが多く渡れば、日本のチャンスが格段に広がる。

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