国内

元刑事が嘆く「ビデオ刑事」の増加と捜査能力の低下とは?

今や事件捜査の主役は防犯カメラ?

今や事件捜査の主役は防犯カメラ?

 警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、昨今の防犯カメラによる捜査の実情をレポートする。

 * * *
「最近の若い刑事を、なんて呼ぶか知ってるかい?」

 今年ももうすぐハロウィーン。昨年は渋谷で若者が軽トラックを横転させ、その上にのぼって裸で踊ったり、トラックを損壊させるという事件が起きていた。その時、使われた捜査手法である“リレー方式”について話を聞いていると、警視庁の元刑事がそう問いかけてきた。

 リレー方式とは、現場の映像から容疑者の外見を特定し、周辺の防犯カメラや監視カメラなどの映像をつなぎ合わせ、容疑者の移動方向をたどり、居場所を突き止める手法である。渋谷の事件ではこの手法で4人が逮捕された。今年4月、お茶の水女子大付属中の秋篠宮家悠仁さまの机に刃物が置かれていた事件でも、このリレー方式が用いられ犯人がスピード逮捕されている。今や捜査に欠かせないのが、このリレー方式だ。

 突然そう聞かれても、ピンとくるものがなかった。刑事のあだ名といえば、“マムシの○○”“すっぽんの××”“仏の△△”“落としの□□”などが相場だが、最近の若い刑事に当てはまりそうなものはない。刑事ドラマでは役柄に合わせてニックネームがつけられることもあるが、現場ではほとんど聞かない。

「わかりませんね」と首を傾げると、元刑事は鼻にシワを寄せ、皮肉たっぷりの声でこう言った。

「ビデオ刑事(デカ)って言うんだよ」

「俺たちの時代は事件が起きると、不信人物や車両などを見なかったか、変な音を聞かなかったなどを近所に聞いて回る地取り捜査が基本だった。今は目撃情報を聞いて回るより、まずは防犯カメラを探して回る」

 容疑者につながる情報よりも、容疑者が映っているかもしれない防犯カメラを探して回ることから、彼らをビデオ刑事と呼んでいるという。

「ビデオ刑事は現場周辺に防犯カメラが見つからないと、聞き込みもせずに戻ってくるんだ。『情報を集めてこい!』とハッパをかけても、『映像がなければ証拠にもならないから、聞いて回っても無駄ですよ』と、尻を動かそうともしない。刑事の捜査能力はどんどん落ちるばかりだ」

 映像と映像をつなげるために聞き込みを行っている感じすらあると元刑事は嘆くが、その一方で防犯カメラなしに現在の捜査は成り立たないのも事実だ。

 全国ではおそよ300万台以上の防犯カメラが稼働しているといわれているが、2018年3月時点で、警察が犯罪が多い地域を中心に設置し管理している街頭防犯カメラは29都道府県1820台。以外と少ないのだが、これでも10年前と比べると5倍に増えている。そのきっかけとなったのは2002年2月、新宿区歌舞伎町周辺に取り付けられた50台の防犯カメラだといわれている。

 当時、歌舞伎町では暴力団と中国人マフィアが勢力争いを繰り広げていた。そしてこの年の9月、住吉会系の組員2人が中国人マフィアに射殺されるという“パリジェン発砲事件”が起きる。場所は歌舞伎町の風林会館の1階にある「純喫茶パリジェンヌ」。店は今も同じ場所にあるが、ひとまわり小さくなり内装も様変わりしている。

関連記事

トピックス

石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン