事実、文政権になってから北朝鮮の人権問題を改善させる取り組みは急速に冷え込んだ。政権発足後、韓国外交部では北朝鮮人権大使のポストの空席が続き、設立予定だった「北朝鮮人権財団」も宙に浮いたまま。韓国メディアからも「今後財団を設立する作業に真剣に取り組むとは思えない」(2018年6月15日付 朝鮮日報)と酷評されているほどだ。
『殺人の品格』で描かれたような、脱北民に対する冷淡な仕打ちは、文在寅政権下で現実に起きている。4月にはベトナム経由で韓国への亡命を目指していた3人の脱北者が、ベトナムで身柄を拘束され、(入国元の)中国に追い返される事件が起きた。
「脱北者団体が韓国政府に3人の受け入れを要請したものの、韓国外交部は『待て』と言うだけで、動かなかった。今年、米国務省が公表した人権報告書でも『韓国政府は脱北者団体を抑圧している』と指摘された」(韓国人ジャーナリスト)
もし3人が北朝鮮に送り返されたとしたら、刑務所送りになるのは確実。最悪、『殺人の品格』で描かれたように処刑される(されている)こともあり得るだろう。
◆「脱北者に極めて冷淡」
そして今年の7月、ソウル市内で母子が餓死していることが水道検針員によって発見された。死亡していたのは脱北者のハン・ソンオク氏(42)と、キム・ドンジン(6)の親子だった。
「脱北してきた母子は何度も役所に支援の申請をしたものの、手続きが進まず餓死したものと見られています。9月に光化門近くで開かれた追悼集会では『命懸けで脱北してきたのに餓死するなんて。統一部は誰のために存在するのか』と糾弾する声があがっていました」(ソウル特派員)