国内

徳井義実の税金問題 改めて「不寛容社会」を浮き彫りにした

私服代などを経費として計上していた(共同通信社)

 SNSの浸透は社会のありように変化を与えている。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

 * * *
 先日、お笑いコンビ、チュートリアルの徳井義実が税金問題で謝罪会見を行った。なんでも法人所得の3年ぶん、約1億1800万円が無申告だったなどの問題があり、追徴課税の総額は約3700万円にのぼったという。

 徳井はお笑い界の中堅どころだろう。テレビでよく見る顔だが、めちゃくちゃ売れているという印象でもない。それでもそんなに稼いでいるのか、お笑いというものは今でもやっぱりジャパニーズドリームを描ける職業なんだな、すごいな、などと私は感心していた。が、ネット世間では、この徳井をめぐって、まったく別の盛り上がり方をしていた。

 それは彼がADHD(注意欠陥・多動性障害)ではないか、という指摘である。たしかに謝罪会見でも自ら「想像を絶する本当にだらしないルーズさ」が今回の問題の原因であると話していた。当人が「想像を絶する」というのはおかしいから、そのようなことを周囲の人々から言われてきたということであると思われる。

 失くし物や忘れ物が多い、整理整頓が苦手、計画的に仕事を進めるのが下手、といった典型的症状例がADHDにはある。税務や会計といった手際のいい段取りや正確な情報処理能力を要する作業はとりわけダメというのも典型例だろう。好奇心旺盛なネット民が徳井の過去ツイートを掘り起こしていたが、その支払いの面倒くささから何度も電気ガス水道を止められたことがある、とのことだ。そんなルーズエピソードが事実なら、ADHD傾向があるという気配はなるほど濃厚に感じられる。

 とはいえ、だ。この騒動の一時期、ツイッターのトレンドに「ADHD」が入っていて、それはすべて徳井の件についてだった。果たしてそれほど騒ぐようなことか。というか、たとえ有名人でも、特定個人の障害をネタに推測や憶測を楽しんでお祭り騒ぎというのは、かなり気持ちの悪い集団心理なのではなかろうか。

 ADHDをはじめとした発達障害の診断は、その分野を専門とする精神科医でもそう簡単にくだせない。各種心理検査を行い、診察も複数回慎重にしてようやく診断が出るものである。それを素人がハンパな知識でどうこうするのはよろしくない。

 徳井の行為は問題である。だが、問題人物ならば何をどう扱っても構わないということでは決してない。

 ネット上の痕跡をつぶさにたどっていくと、実は、当初、ツイッター上でこの話題をよく取り上げていたのは、「当事者」と思わしきアカウントが多かった。

〈徳井の脱税、今までのエピソード(ネットソースなので真偽不明)が本当だとしたらこれADHDの回避行動では?って思ったのと今までの回避行動がお笑い芸人の単なるおもしろエピソードとして消化されていたせいで誰も指摘することなく年々重症化していたのでは?って思うとちょっと問題が変わってくるな〉

 というツイートがバズったアカウントも、〈RTが1万超えた辺りから「勝手に人をADHD認定して話すな、お前は医者か?ADHDの人に失礼だぞ」みたいなリプが増えてきたんだけどADHDの回避行動に似てるからもしかしたらって話をしてるだけで別に認定はしてないし別に医者でもないわ、もっと言えば俺も患者側で薬飲んで毎日何とか生活してるんじゃ〉とのこと。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン