2人の子供にも恵まれ、30~40代は子育てをしながら大学教員として勤務。当時の「家庭と仕事の両立」について、緒方さんは2005年の『婦人画報』のインタビューにこう答えている。

《私たちが働くのにチャンスがたくさんあるという時代ではありませんでしたから、下の子どもが学校へ行くまでは、やはり長く家をあける仕事にはついていません。だからICU(国際基督教大学)にいた10年は、非常勤講師だったんです。(中略)それでも、大学の仕事というのは、ある程度自分で自分の時間をコントロールできますからね。子どもが小さければ、早く寝かして、自分の勉強する時間をつくるとか。朝の9時から夕方の5時まで行く仕事とは違います》

 子供が手を離れた50代になると、今度は脳出血で母が倒れ、仕事をしながら介護を続けることになる。世界を股にかけ、知性や交渉力が必要となる難民支援と、育児や介護を両立するのは並大抵の苦労ではなかったはずだ。

 それだけではない。飛行機を乗り継いで現地を訪問、15kgもある防弾チョッキを着て歩いたり、野宿に近い宿舎に耐える体力も必要だ。

 強じんな肉体をつくった秘訣の1つは、学生時代にのめり込んでいたテニスだったと緒方さんは次のように回想していたという。

「健康法はテニス。短い時間でたくさん運動できるのがいい」「テニスで得たものは最後まで勝つために全力を尽くすファイトよ」

 秋葉原駅クリニックの内科医、佐々木欧さんが分析する。

「2018年に発表された約9000人を25年間追跡したデンマークの研究では、スポーツをする人は平均余命が長く、とりわけ複数人で行うスポーツをする人の寿命が長かった。テニスは上半身もよく動かす全身運動であるうえ、複数人でコミュニケーションをとりつつ楽しみながら続けられる体にいいスポーツのひとつといえるでしょう」

 加えて、テニスは基本的に野外で行うスポーツであるため、適度に日光を浴びる。

「運動自体の刺激も骨にいいのですが、さらに日光を浴びることで体内にビタミンDが生成される。これがカルシウムの吸収をうながし、骨粗しょう症予防にもつながります」(佐々木さん)

 緒方さんはかつて、聖心女子大学の先輩後輩の仲である上皇后美智子さまともテニスで一戦を交えたことがあるという。85才を迎え、今なおお元気な上皇上皇后両陛下をみても、テニスプレーヤーであることは、「生涯現役」の1つのキーとなることは間違いないだろう。

※女性セブン2019年11月21日号

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