国内

緒方貞子さん 「5フィートの巨人」と呼ばれたタフネスさ

1992年、防弾チョッキを着てボスニアの紛争地域の視察をする緒方さん(共同通信社)

 5フィートの巨人、92才で亡くなる──英国のBBC放送は緒方貞子さんの訃報を速報でこう紹介した。5フィートを換算すると、身長約150cm。語学力はもちろん、ハードな交渉をいくつもまとめ、小柄な体ひとつで紛争地域に入ってゆく胆力を目の当たりにした国連の同僚たちから敬意を込めて“巨人”と呼ばれていたのだ。

 全国紙記者が解説する。

「1976年、48才で日本女性として初めて国連公使となって以来、難民支援に関する数々の功績は世界中から称賛されています。60代半ばになっても危険な地域へ臆することなく防弾チョッキ、ヘルメット姿で自ら足を運ぶ姿は『難民の偉大な保護者』として海外メディアでも注目の的でした」

 2000年に国連を退任した後も、その歩みは止まらない。2020年東京五輪・パラリンピックでは組織委員会理事会の助言役である、顧問会議のメンバーでもあった。緒方さんの薫陶を受け、親交も深かった市川房枝記念会女性と政治センター理事長の久保公子さん(69才)が振り返る。

「緒方先生がこんなにも長く仕事を続けてこられたのは、国連の現場に出て紛争地域にも足を運ばれて、直に困っている人たちに触れたことが大きかったのでしょう。現場を見た以上、自分だけ安全な場所で研究するのでは済まされないという強い思いに突き動かされてのことだと思います。とにかく度胸のある、温かいお人柄のかたでした」

 最後まで信念を貫きとおした緒方さんの訃報に接し、国連職員の業務内容の過酷さ、多忙さも改めて浮き彫りになり、「なぜ92才までこんなにも元気で多くの仕事を成し遂げられたのか」という声も上がっている。

 まさに「人生100年時代」を象徴する緒方さんの人生をひもとくと、生涯現役のヒントが詰まっていた――。

◆お嬢さまを変えた18才の敗戦

 緒方さんが生まれたのは1927(昭和2)年。曾祖父は首相を務め、五・一五事件で暗殺された犬養毅。祖父は外相、父も外交官という「華麗なる一族」だった。少女時代の緒方さんは父の赴任により米・サンフランシスコや中国広東省、香港などで過ごし、小学4年生で帰国。その後は聖心女子学院で学んだ。そんな「正真正銘のお嬢さま」が平和のために生涯をささげるきっかけになったのは、18才で迎えた敗戦だった。彼女は当時を振り返ってこう語っている。

「私たちの世代にとって、あの戦争は愚かすぎました。どうしてあんなことを始めてしまったのか、確かめてみたくなったのです」

 人生のテーマを見つけた緒方さんは渡米し、カリフォルニア大学など名だたるエリート校で学んだ。その後の活躍は、前に述べた通りだ。

 まさに生涯現役を体現する仕事ぶりだった緒方さんだが、私生活でも結婚・出産・介護と女性のライフイベントをフルコースで体験している。

 結婚は33才。当時としては晩婚ではあるが、緒方さんは「私たちとしては、ちょうど適齢期」と振り返っている。夫の四十郎さんは日本銀行勤務のエリートで、政治家の三男坊。にもかかわらず気取ったところはなく、「夫の後ろを3歩下がってついてゆく」が理想の妻だとされていた当時、バリバリ働く緒方さんを四十郎さんは献身的にサポートした。

関連記事

トピックス

この日は友人とワインバルを訪れていた
《「日本人ファースト」への発言が物議》「私も覚悟持ってしゃべるわよ」TBS報道の顔・山本恵里伽アナ“インスタ大荒れ”“トシちゃん発言”でも揺るがない〈芯の強さ〉
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン