芸能

古今亭志ん朝の「らくだ」、志ん生の血を感じさせる

志ん朝ファンなら必聴の「らくだ」(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、1969年から1974年まで開かれていた、若き日の春風亭柳朝が古今亭志ん朝の演目を決めていた「二朝会」のCDから、志ん朝のネタおろしでそのままお蔵入りになった噺など、貴重な若々しい高座についてお届けする。

 * * *
 1969年から1974年まで年6回開かれていた「春風亭柳朝 古今亭志ん朝の会」(通称「二朝会」)での志ん朝の高座音源を集めたCD16枚組「古今亭志ん朝 二朝会」が河出書房新社より発売された。

 志ん朝の「二朝会」の演目は柳朝が決めていた。そのせいか、ネタおろしでそのままお蔵入り、という演目が幾つもある。その中から今回『蛙茶番』『禁酒番屋』『三人無筆』『疝気の虫』『紺屋高尾』『ちきり伊勢屋 上』が商品化された。

 柳朝の十八番『蛙茶番』はいわゆる「ネタの交換」で、柳朝の型に自分の個性を加えて軽快に演じ、とても面白い。演らなくなったのは「自分にエロは似合わない」と思ったからだろうか。『禁酒番屋』も悪くないが、やはり「下ネタはやめておこう」ということかもしれない。

 志ん朝の『三人無筆』はバカバカしくて楽しい。今あまり演じ手がいない噺だが、志ん朝が演り続けていたら違っていた気がする。

 志ん生十八番『疝気の虫』を一度でやめたのは「親父のようには演れない」と思ったからだという。独特な品の良さが漂う『疝気の虫』で、談志の破天荒な『疝気の虫』と好対照。子供時代の「虫の思い出」を語ったマクラはファン必聴だ。

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