見逃せないのは、導入で恩恵を受ける事業者の側に、導入を進めた教育者らがポストを得たという事実だ。
ベネッセの東京・新宿オフィスにはGTECを共催(2018年6月まで。現在は研究開発協力)する団体として、一般財団法人進学基準研究機構(CEES)が設立されている。その設立当初の評議員に名を連ねていたのが、元慶應義塾大学塾長の安西祐一郎氏だ。
安西氏は2014年の中教審答申を会長として取りまとめた人物で、CEESの設立は答申の1か月前。つまり文科省が「民間活用」を打ち出す直前に、旗振り役が業者側の役職を得ていた。
学識者だけではなく、官僚OBもいる。法人登記によれば、代表理事は元文部省事務次官の佐藤禎一氏。理事には高校教員から文科省に転じ、2年前まで同省で教科調査官を務めていた向後秀明・敬愛大学教授が就任。参与には、文化庁長官官房総務課会計室長などを経験した阿部健氏が就いた。
◆「法令違反」まで
興味深いのは、こうした人々が、英語民間試験導入への批判が高まったタイミングで、次々と団体を去っていったことだ。
まずは今年3月、中教審答申を取りまとめた安西氏が評議員を退いた。筆者は今年1月、CEESにポストを得るのが利益相反にあたらないか、同氏に直撃取材した。その後に、役職を辞したかたちだ。
さらに、9月から10月にかけては理事の向後氏、代表理事の佐藤氏、参与の阿部氏が、慌てて体裁を取り繕うかのように相次いで退任している。