ホンダの新型フィットはどこまでユーザーに存在感を示せるか

ホンダの新型フィットはどこまでユーザーに存在感を示せるか

 企業経営の良し悪しは、経営者の判断の正しさだけには依らない。うまく行っているときにはミスがミスにならないくらいうまくいき、流れが悪いと何をやっても裏目に出るものだ。現状のホンダは流れが悪く、経営陣も従業員も保身に走ってしまっている。

 先に述べたN-WGNとフィットは日立製作所が買収したオランダの部品メーカー、CBIの電子ブレーキ部品が問題を起こし、N-WGNは生産停止、フィットは発売が今年10月から来年2月に繰り延べるという事態に見舞われている。

 伊東前社長時代の第3世代フィットは、検証不完全なことが半ば分かっていながら発売を強行し、結果、ハイブリッドシステムについて5回も連続リコールを出した。それに比べれば事前に手を打ち、顧客に迷惑をかけなかった分ずっとマシだ。

 が、「設計、生産、部品調達を担当する購買が互いに責任を回避するような空気があった」(ホンダ関係者)のが仇となったか、問題解決のスピードはお世辞にも速いとは言えなかった。各部署の権限の壁を取り払うという改革ができていないことの証左であり、八郷氏の求心力の弱さが露呈した格好である。

 八郷カラーの第4世代フィットが仕切り直しで発売され、それがホンダの変化を体現する新世代商品として市場から好意的に受け止められれば、そんな悪い流れを変える原動力になる可能性はある。モノが受ける、モノが売れるという結果が劇的に出れば、経営者の求心力は自動的に高まるからだ。

 第4世代フィットにはその材料となるだけのポテンシャルが十分にある。懸念材料はホンダの国内営業が商品力任せ、売れなければ値引き頼みという傾向があること。値引きに頼ることなくしっかり売っていくアイデアが求められるところである。

 折しも来年2月はトヨタ自動車が同じBセグメントの「ヤリス」を発売する。ヤリスはフィットとは真逆の、欧州市場向けのドライバーズカー的なキャラクターに仕立ててきているため、直接競合はそれほどないだろうが、走りと生活密着という価値観の対決という点ではむしろ競争が激化することだろう。そこでホンダがユーザーに存在感を示せるかどうか、楽しみなところだ。

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