デザインアイコンという観点では特徴がなくなり、一見どこにでもありそうなスタイリングになった感のある第4世代フィット。もちろんそのデザインについては賛否両論が巻き起こったが、興味深いのは、ポジティブに受け取っている人たちの多くが、「断然ホンダらしくなった」と評していること。筆者もそのように感じた。
フィットの動向を気にかけていたライバルメーカーの商品開発系幹部は、「予想以上に脱力路線に戻ってきた」と、アンヴェイルされた実物を見たときの感想を漏らす。
「今は肉食系デザイン全盛の時代。ともすれば、違いを出すために小手先のデザインに陥ってしまいがちという状況です。そこに、あんな“すっぴん”で勝負するようなクルマが登場すると、逆にとても新鮮に感じられます。そして、飾り気がないのに全体としてはとてもホンダらしい。ウチだってクルマ作りは頑張っていますが、その点については少し悔しい」
なぜ、目立ったアイコンがないのにクルマづくりのプロにもユーザーにも第4世代フィットがよりホンダらしく見えるのか──。じつは余計なものをつけなかったからこそ、ホンダの考える良いファミリーカーとはどのようなものかという哲学が素直に表出しているように見受けられた。
その哲学とは、前席、後席を問わず、みんなが気持ちよく乗れて初めてドライブを楽しめるファミリーカーになるというもの。そのため窓面積を広く取り、さらに後席のヒップポイントを前席よりかなり高く取るというパッケージングを行っている。
このシーティングは俗にシアターレイアウトと呼ばれているもので、ホンダの専売特許というわけではないのだが、ホンダのこだわりぶりはライバルメーカーと比較しても突出している。前席と後席のヒップポイントの高さの差を計測すれば、ホンダはダントツであろう。