以前のような“予定調和なしの緊張感”が醸し出されたことで、数字が上向いたのだろう。そして、“緊迫の構図”が特番時代の『蛭子中心』から『太川、マドンナ中心』に変わった点に着目したい。蛭子は宇垣に「(太川と)対決した方がいい」と囁いたように、波乱の中心からけしかける側に回り、存在感を発揮していた。
このように根本的な対立軸が変化したため、マドンナの人選と蛭子に代わる新パートナー次第で『バス旅』は人気を継続できるはずだ。
新パートナーに“好感度を気にしない”“あまりやる気がない”“傍若無人”など蛭子と同じ特性を持つ人を選べば、『太川VS.新パートナー』『太川VS.マドンナ』『新パートナーVS.マドンナ』という3パターンの対決が可能になる。
いわゆる“人気お笑い芸人”は起用しないほうがいいだろう。空気を読むことに長け、意識的に番組を盛り上げられる技量は『バス旅』においては逆に不要である。狙って笑いを取れる人ではなく、自然発生的な笑いを起こせるタレントのブッキングに期待したい。
決して現在の人気や知名度に拘る必要はない。あくまで太川との組み合わせによる化学反応を重視した上で新パートナーを選定してはどうか。
ぜひ、リーダー・太川陽介の『バス旅』存続を願いたい。その時、“ナレーション:キートン山田、解説:蛭子能収”というコンビが実現すれば、楽しみはさらに倍増するだろう。
■文/岡野誠:ライター・芸能研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)が話題に。同書では、蛭子能収の出世作の1つ『教師びんびん物語II』の視聴率がなぜパート1よりも高かったか、野村宏伸へのインタビューも含めて詳細に分析。また、田原本人や関係者への取材、膨大な文献、視聴率を用いて1980年代以降のテレビ史も丹念に考察している。