親はどう感じているのか。高校生になる長女が同校を卒業したある母親が言う。

「“卒業したら、社会とギャップがあって大変でしょう”としょっちゅう聞かれますが、まったく心配するようなことはありません。まわりと話し合って物事を進める中学校生活を送るうちに、コミュ力(コミュニケーション能力)が磨かれるのでしょう、新しい環境でも適応能力が高いんです。長女は今、制服も校則もある高校に通っていますが、違和感なく、すぐなじみました」

 ほかの保護者ともよくこの手の話になるそうだが、「いつも同様の結論になる」という。徐々に校則が減っていき、全廃されていく過渡期に兄弟で在籍していた、高校2年生の生徒がこう話してくれた。

「決して勉強が得意ではなかったぼくに、この中学校はいろんな生き方があると教えてくれました。西郷校長が朝礼でしてくれた、今も忘れられない話があります。“もし、自分で好きな色鉛筆を12色選んでケースに詰められたとしたら、どんな組み合わせにするか”という内容でした。黒1色で統一するのもいいし、カラフルな色をそろえるのもいいって。ぼくはこれからの人生で、自分でいろんな色をそろえていけばいいんだと気づかせてくれました」

 中学時代に朝礼で聞いた校長の話を覚えている人が、どれほどいるだろう。この少年は今、色鉛筆の話を胸に、難関といわれる芸術大学を目指して研鑽を積んでいる。現在、桜丘中学校のホームページには校則とは別の、「3つの心得」が掲載されている。

《礼儀を大切にする》《出会いを大切にする》《自分を大切にする》

 校則全廃が決まった時、これからの桜丘中学校の拠りどころになるものをと、誰より校則厳守に厳しかった、あの生活指導主任の教員が考え抜いて原案を書いたという。桜丘中学校の生徒手帳に、変わらず今も刻まれている。

※女性セブン2019年12月5・12日号

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