国内

校則全廃中学 増えたのは「議論」、生徒の判断力養われる

1日1回は、学校を巡回する西郷さん。気がかりな生徒がいる場合は、教室に入って声をかけることもある(撮影/浅野剛)

 力で締め付ける学校教育は、ゆとり教育時代を経て緩和されてきたかに思えた。ところが昨今の「ブラック校則」という言葉が示すとおり、子どもたちは理不尽な掟に人権を侵され、自分で考える気力をも奪われている。そんな中、“脱ブラック”へと大きく舵を切った教育現場がある。

 11月18日、東京・世田谷区内の公立中学校が、各校のホームページで校則の公開をスタートさせた。こうした義務教育下での校則の一斉公開は、日本で初めての試みともいわれ、まさに画期的だ。昨今、「ブラック校則」という言葉が取り沙汰され、毎日のように世間を賑わしている。きっかけは2017年、大阪府の女子高生が生まれつき茶色い毛髪を黒染めするよう強要されて不登校に追い込まれ、府を提訴したことだった。校則問題に詳しい教育社会学が専門の名古屋大学大学院准教授・内田良さんが話す。

「この事件以降、あらためて全国の中学・高校で校則について調査してみると、地毛証明書が必要な学校が6~7割もある都道府県があるほか、帰宅後のことにもかかわらず外泊を禁止したりと、明らかに人権を侵害するようなものがありました。下着の色まで指定する学校も複数あり、ブラック校則は、子どもたちの選択権や自由に考える機会を奪っています」

 今年8月には評論家の荻上チキさんらが参加する『ブラック校則をなくそう! プロジェクト』が、現状の調査を求める要望書と6万人超の署名を文部科学省に提出。また、2018年の大阪府立高校の校則公開に続き、今年10月には岐阜県の教育委員会が、人権侵害の恐れのある校則が、9割を超える県立高校にあったと発表。移行期間を経て、来年度までにこれらを廃止するとした。校則の公開は、ブラック校則を抑制する意味で、非常に意義深いと内田さんは言う。

「ブラック校則を報道で取り上げる機会が多いものの、実際の教育現場では、見直しに向けた動きが鈍いのが現状です。というのも、学校はある種の治外法権的側面がある。公開することで市民の目に触れ、理不尽なものが淘汰されていくことにつながるでしょう」

 世田谷区議会で校則の公開について取り上げられたのは今年6月。「セーターはOKでもカーディガンはNG」「学年ごとに使えるトイレを指定」「給食中の牛乳はしっかり飲む」──これまで同区立中学校の多くに、なぜ明文化されているのかと首を傾げたくなるような校則があった。教育委員会は各校に校則の見直しを要請。精選、削除を経て公開に至った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国分太一コンプラ違反で解散のTOKIO》山田美保子さんが31年間の活動を振り返る「語り尽くせぬ思い出と感謝がありました」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン