心配なのは、「イスラム国」のテロが再燃することだ。シリア国内には、「イスラム国」兵士が1万2000人いると推測されている。彼らのキャンプを管轄していたYPGが、今回の攻撃で機能しなくなれば、テロリスト集団が野に放たれる可能性も出てくる。すでにシリア北東部で捕らえられていた「イスラム国」兵士750人が脱獄したという。
◆イラク国内避難民のクルド人少女
それにしても、またもやクルド人か……と、ぼくは悲しい気持ちになった。
ぼくたちJIM-NETは「イスラム国」が台頭してからイラクに逃れてきたシリア難民や、イラク国内避難民の支援をしてきた。そのなかにはクルド人も多い。
2014年、「イスラム国」が、クルド人でヤジディ教徒が暮らしているシンジャール山を攻撃した。5000人のヤジディ教徒を拉致し、若い女性を性奴隷にしたりした。そのとき、シンジャール山から抜け出し、国内避難民となったナブラスという少女がいた。彼女は悪性のユーイング肉腫だった。
ドホーク郊外で家族とともに暮らす彼女を訪ねることにした。ろくに食べていないと聞き、日本から持っていった乾燥麺があるので、食堂でスープだけ用意して持っていこうと決めた。そこで、地元の食堂のオヤジさんに相談すると、「日本人はそんなことまでしてくれるのか」と驚かれた。
翌日、待ち合わせ場所に、オヤジさんはトラックいっぱいに料理を積んで現れた。オヤジさんの心意気にぼくたちもうれしくなって、ナブラスのところに料理を持っていったのを思い出す。