国内

大学入試改革が頓挫か キーマンが明かす「抵抗勢力の正体」

記述式試験中止法案を提出した野党の代表者ら(時事通信フォト)

 英語の民間試験と記述式問題の導入を核とする大学入試改革は、野党やメディアからの激しい批判により、先送りになった。

 一連の改革の理論的な支柱といえば、鈴木寛教授(東大、慶應大)である。鈴木教授は民主党政権時代に文科省副大臣を二期務め、自民党政権下でも同省大臣補佐官を四期務めてきた。大学入試改革のプランを構想し、実際に文科省の指揮を執ってきたキーマンなのだ。

 共通テストへの英語民間試験導入、国語・数学記述式問題導入に対する批判が喧しいなか、鈴木教授は入試改革を潰した野党やメディアの背後にいる抵抗勢力の存在について語った。

 * * *
──今回の騒動で、入試が変わるか変わらないかで振り回された受験生は、一番の被害者だったのではないか。

鈴木氏:それは一番かわいそうですよ。入試が政争の具にされて振り回されたんですから。メディアと野党は政府のやることにはすべて反対で、入試改革に反対する人たちの尻馬に乗るばかり。世論もそれに誘導されてしまっている。それで犠牲になっているのは子供たちであることを考えていただきたい。

──改革に反対する人々とは?

鈴木氏:今回のことで地方の教育委員会や高校校長、教員は、全高長(全国高等学校長協会)に対して怒っているんです。地方の高校関係者は英語の民間試験導入に賛成していて、大変、協力的な地域も多くありました。セファール(CEFR。言語能力を評価する国際指標)という世界中の大学で利用されている英語検定の体系に子供たちを載せてあげることで、地方の高校生でも、実質的に地域格差を縮めて子供の可能性を広げてあげられるチャンスが増えるんですから。現に、入試センター試験の会場よりも、受験地は増える予定でしたし、これを機に授業も変わりつつありました。

 地方で民間試験を実施する場合に、問題になるのは会場と試験監督者(の確保)であることは初めからわかっていて、地方の先生方は、子供たちになるべく楽に受験させてあげたいから「オレたちが試験官をやるよ」と。試験は土日にあるので、試験監督をやるよと言ってくれる教員は、地方には十分いたのです。

 ところが、中央の全高長が「教員の働き方改革」を楯にして、高校教員を試験監督に使うなと反対していたので、表で交渉できなくなってしまった。地域格差をなくすために自分たちが試験監督もやると言っているのに、どういうわけか、都会の全高長が「民間試験導入は地域格差を広げる」などと言って反対しているので、なんなんだと。「都会の人間が、導入反対するために自分たち地方を利用した」と怒っているのが実情です。

 地方だけではありません。中堅・若手の英語教員も残念がっています。私は毎週のようにいろんなところで講演をしていますが、コミュケーション英語の民間試験導入については、40歳代以下の英会話ができる英語教員には「やっとやりたい授業ができるようになっています」と非常に高く評価されていました。これからは“入試にも関係する”から4技能(読む、書く、聞く、話す)の授業を堂々とできるようになった、と喜んでいました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン