まず2010年、住友不動産が有明ガーデンの開発地を東京都から取得。競争入札で一度は不調に終わったいわくつきの土地。そこを不調だった時の予定価格からかなり安い価格で取得したのだ。
あの当時、不動産業界では、「あんなところ買って、住友不動産は大丈夫?」という空気が流れていたように思う。しかし、今から思えば住友不動産には先見の明があったのかもしれない。
2013年秋には、湾岸エリア全体の歴史を変える出来事が起こった。2020年の東京五輪開催が決定したのだ。ハッキリ言って、その瞬間から有明も含めた東京湾岸エリアのマンション市場にはかつてないフォローの風が強力に吹きだした。決定の翌日から、それまで閑古鳥が鳴きそうだった新築タワマンのモデルルームには予約が殺到。人で溢れ返った。中古マンション市場でも、目に見えて値上がりが始まった。
もっとも顕著に値上がりしたのは中央区の勝どき周辺、そして選手村が予定された晴海エリア。江東区では豊洲エリアが人気化した。それで、有明は……当然、有明にも好ましい変化は現れた。中古マンションの値上がりである。しかし、他のエリアに比べれば、その動きはやや鈍かった。
さて、問題はやはり東京五輪が閉幕した後に、どこまで街を活性化できるかだろう。住友不動産が東京都から取得した有明の土地の一部は今、「シティタワーズ東京ベイ」として、すでにその雄姿を有明の街並みの中にそびえさせている。
建物完成は2019年の7月だそうだ。ただ、まだ人が住んでいる気配がない。購入契約者への引渡しや入居も行われていない。
現時点(2019年12月20日)で、オフィシャルページには販売戸数が「411戸」と表示されているが、入居予定日は「2021年4月下旬」。五輪が閉幕して半年以上も経過してからだ。ということはつまり、今からこのマンションの購入を契約しても、居住者として五輪の臨場感を味わえないことになる。