●武藤正敏氏(元在大韓民国特命全権大使・離韓派)

武藤正敏前駐韓大使(時事通信フォト)

 日韓関係は、韓国大統領の対日観が重要になる。

 昨年の新年記者会見で文在寅大統領は、「日本は歴史問題に関し、もう少し謙虚な姿勢を示すべきである」と言った。これは外交の常識からいっても非常に失礼な発言です。「正義は韓国にあり、韓国のいうことに日本は謙虚に従うべし」と受け取れる。

 こうした歴史認識を背景に、文政権はいわゆる徴用工問題で日韓請求権協定で合意した約束をひっくり返してしまった。これまでの韓国政権は日韓請求権協定の合意を尊重してきたが、現在の姿勢はこれと異なる。文政権の姿勢に妥協すれば、未来永劫韓国のごり押しに付き合わざるを得なくなるでしょう。文政権は親北志向が強く、北朝鮮の核開発を半ば庇うような動きさえ示しています。このような政権と、現実的に日米韓の連携を図っていけるのか。

 文在寅大統領がこのような姿勢を転換させない限り、冷静に距離を置いていくしかない。それは当面文政権下の韓国と「離韓」することを意味する。今後も、韓国が荒唐無稽な主張や要求をしてきたら、安易に妥協することなく冷静に批判し反論すべきです。

 一方、日本がやみくもに対立をあおることは、文政権が内政上で日本を悪用する結果となりかねない。韓国には「用日」という言葉がある。韓国の国益に利用できるなら感情は入れずに冷静に日本と付き合っていくという意味だが、お互いに「用日」、「用韓」の関係でいいではないか。

 今後、日本も「用韓」というドライな関係を築く。国益に基づいた外交をすれば、双方の国益が最大となるところで妥協できるかもしれない。

 隣国同士の難しい関係は、そうした合理的な思考で立て直すしかないはずです。

【※本誌読者アンケート「2020年日本の重要問題について意見をお伺いします」から集計。998人が回答。100%に満たない部分は無回答】

※週刊ポスト2020年1月17・24日号

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