面会が予定の1時間に迫ろうとする頃、ゴーン氏の次女が帰ってきた。クリスマスを前にゴーン氏の元を訪れていたのだという。「夕食はピザを取る」といった他愛もない会話を交わすと、それまでの険しい表情から打って変わって柔和な“父親の顔”になり、トレードマークの眉も下がる。しかし彼女の姿がなくなると、
「娘には会えるが、保釈条件で妻や息子には会うことすらできないんだ」
寂しそうにそうつぶやいた。感情の“揺らぎ”が垣間見えた瞬間だった。
インタビューを検討するにあたってゴーン氏側の要望は、「私が無実であることを、4月に始まるであろう裁判に合わせて訴えていきたい」とのことだった。どのような取材ならば可能なのか、年明けの1月10日に改めて話し合うことになっていた。
別れ際、「よいクリスマスを。新年に会えるのを楽しみにしている」と手を差し出すと、「ありがとう」と力強く握り返したゴーン氏。しかし再会の場所は日本ではなく、レバノンになった。本誌取材班はレバノンで記者会見会場入りが許された3つの日本メディアのうちの一つだった。
※週刊ポスト2020年1月31日号