◆「基準値内は健康」の間違い
基準値は厳しすぎるばかりではない。逆に緩すぎると指摘される検査項目もある。
血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンと、ブドウ糖が結合する割合を示す「HbA1c」は、糖尿病を診断する際に用いられる。現状の基準値では6.5%を超えると受診勧奨となる。
「この数値を超えてから受診しても遅すぎます」と指摘するのは、にしだわたる糖尿病内科院長の西田亙医師だ。
「糖尿病は単に血糖値が高くなる病気ではなく、体内の細い血管がダメージを負うことで網膜症、腎症、神経障害という3大合併症を引き起こします。受診勧奨の基準値であるHbA1cの数値6.5%は、すでに網膜症が進行して目の奥で出血が始まってもおかしくないレベル。
しかも5%後半になると太い血管までダメージを負い、心筋梗塞や脳梗塞などにつながるとの報告もあります。日本では6.5%が糖尿病の入り口とされますが、本来は5%後半で黄信号、6.5%で赤信号くらいの危機感を持ち、できるだけ早く治療を始めるべきです」(西田医師)
肝臓や胆道に異常があると数値が上昇するγ-GTP。51U/Lで健康指導の対象となるが、大櫛氏は「この基準値は甘い」とする。
「私が算出した健常な人の上限は、男性でいえば60~64歳で49まで、65~69歳で48までという結果でしたが、女性では60~64歳で31まで、65~69歳で29までと現行基準値と大きくひらきがあった。これでは早期の異常が見逃される可能性があります」