新潟大学名誉教授の岡田正彦氏は別の観点から指摘する。
「γ-GTPは飲酒量が多ければ上昇し、少なければ減少するもので、『肝臓の健康度合い』を示した数値であるというエビデンスはありません。飲酒はがんのリスクを高めます。数値が高い人は飲酒量を減らすべきですが、基準値に収まった人も『低いからもっと飲める』と考えるのは誤りです」
基準値があることによって、病気のリスクをわかりやすく体感できるし、健康管理の指標にもなる。だが、基準値を守れば必ず健康を維持できるというわけではない。病気のリスクは、個人個人で異なると認識することが大切だ。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「誰がどの病気になるかは基準値で一定に線引きできるものではなく、家族歴や既往歴などによって一人ひとりのリスクは異なります。健康診断の基準値を絶対視して一喜一憂するのではなく、あくまで生活習慣改善のひとつの指標として捉え、前の年と比べて大きな変化がないかなどを毎年チェックすることが重要です」
健康診断の結果を真に活かせるかどうかは、受診者次第なのである。
※週刊ポスト2020年1月31日号