個々の相続人に遺留分放棄の手続きを家庭裁判所に取ってもらう他、中小企業経営承継円滑化法に基づき、後継者と他の相続人全員の合意で遺留分問題の解決を図ることも可能です。他の相続人から、これら手続きの協力を得られそうもないときは、株式の一部を議決権のない株式に変更し、議決権のある株式のみ贈与等を受け、会社の支配を確保する方法があります。
また、会社の内容がよければ、株の評価も高額になり、株の贈与等で事業承継すると、多額の税金が発生する場合があります。一定の手続きを取ることで、納税猶予や免除を受ける事業承継税制の利用が有効です。他にも相続時精算税制を利用して当面の贈与税の支払いを抑えることができます。しかし、贈与時の評価額で相続時に精算されるので、今後の会社の業績いかんで得失が分かれます。
どの方法を取るにせよ、素人では難しい問題があるので、弁護士や税理士と相談してください。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年1月31日号