国内

象徴天皇制は芸能人天皇制、トモダチ天皇制へと世俗化した

評論家の呉智英氏

 1995年、阪神淡路大震災が起きてから約1か月後、兵庫県の避難所を訪れた皇太子ご夫妻に、男の子がサインをお願いする場面があった。皇太子さまは男の子からノートを受け取ると「がんばってください」というメッセージを書かれたという。その半世紀前には、天皇ご一家といえば神に等しい存在だったことを思うと、ずいぶんと変化したものだ。評論家の呉智英氏が、世俗化する天皇制の歴史を振り返り、その真実が知られなくなることへの危惧を問いかける。

 * * *
 一月二十五日、国技館で天皇一家の大相撲観戦があった。天覧である。場内放送があると客席では歓声と拍手が沸き上がった。ラジオのニュースで聞いていると、口笛まで混じっていたようだ。

 いやあ、驚いた。口笛は親しみの表現であり、からかいの表現でもある。友人の結婚式のパーティーで口笛が鳴るのも、こんな美人を嫁さんにしやがって、このヤロー、という気持ちからだ。戦後の象徴天皇制は、女性誌に見られるように芸能人天皇制になり、さらにトモダチ天皇制にまでなった。天皇制の世俗化である。

 私は尊皇の気持ちがあるわけではないが、別の意味で天皇制の歴史や真実が知られなくなるのはよくないと思う。令和改元以来、マスコミも世論も、世俗天皇制の風潮に呑まれているようだ。

 産経新聞では昨年来「記紀が描く国の始まり 天皇の肖像」を連載している。昨年二月二十二日付の「国生みと神生み神話」とする囲み記事にこんな一節がある。

「〔女神〕イザナミから声をかけて国生みしようとした。しかし、しっかりした子が生まれなかったため、高天原に相談すると、男神から声をかけるように言われた」

 この「しっかりした子が生まれなかった」て何だろう。

 岩波古典文學大系『古事記・祝詞』では「生める子は、水蛭子(ひるこ)。此の子は葦船に入れて流し去(う)てき」とし、水蛭子とは「手足のない水蛭(ひる)のような形をした不具の子の意」か「手足はあるが骨無しの子の意」と注釈する。要するに「不具の子」が生まれたので葦船に入れて海に捨てたのである。

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン