国際情報

EU離脱でイギリスの野菜大幅値上げか 生活習慣病増の懸念も

1月31日、EU離脱を祝うロンドン市民(時事通信フォト)

 EU離脱により、イギリス国民の暮らしはどう変わるのか。歴史作家の島崎晋氏は、「庶民の食卓」に起こるであろう変化に注目する。

 * * *
 英国がEUから離脱して一週間が過ぎた。正確を期するならば、交渉のための移行期間に入ったわけで、国営放送のBBCはその状況を「しばらくは出発ロビーに」と表現している。

 移行期間は今年いっぱいまでだが、議会での承認手続きも考えると、交渉期間は最長で約9か月しかない。通常なら5年かかる交渉を9か月で済ませ、新たな合意を結ばねばならないのだから大変である。

 英国政府としては、EUとカナダ間で締結された自由貿易協定(FTA)と同様に品目ベースで98パーセントの関税を撤廃したいところだが、EUからすれば、拠出分担金を払わずに従来と同等の権利を求める主張に同意するはずもなく、交渉の難航は避けられないだろう。

 英国にとってEUは最大の貿易相手。2018年の統計によれば、輸出額の45パーセントはEU向けで、輸入額の53パーセントもEUが占める。一つ具体例を挙げれば、スコットランド名産のスコッチウイスキーの中身は国産でも、瓶はフランス製、コルクはポルトガル製だ。来年以降は瓶とコルクを輸入する際と完成品をEUに輸出する際の二度にわたって関税がかかり、かなりの値上がりが必至である。

 それ以上に庶民の生活を直撃するのは、野菜や果物の値上がりだろう。ロンドンを中心とするイングランドは北海道よりも高緯度に位置しており、国産の野菜は種類や量が限られる。EU加盟のどこかから安く買えるという理由から、ビニールハウスを設置してまで自給しようとする動きはこれまでほとんどなかったようだ。そのため、EUとの関税交渉がうまくまとまったとしても、輸送費の増大に加えて「最大25パーセント」と推測される通貨ポンドの下落などが重なり、すべての輸入産物において末端価格の大幅な上昇が避けられない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン