コミックマーケットの来場者数は過去最高を更新し続け、2019年末は4日間で75万人を記録した(時事通信フォト)
世界最大の同人誌即売会コミックマーケット、通称コミケでのコスプレ衣装については、運営する準備委員会が露出を厳しく規制しているが、その分、若い子でも初心者でも気軽にコスプレが出来る安心感がある。もちろん串田さんに狙われているとも知らずに。そしてこちらも世界最大の模型イベントであるワンダーフェスティバル、通称ワンフェスは、コミケよりは規制がゆるく露出の高い衣装も可能だが限度はあるししっかり運営により管理されていて安心だ。そんな安心しているところを狙われていると知ったら、女の子も絶対イヤなはずだと言うと、
「撮られるために来てるんだから問題ないでしょ。カメコはみんなやってるよ」
とむべもない。犯罪ではないが、どんな写真に撮られたいかという被写体の気持ちを無視した撮影は、善意の合意で成り立っているコミケ会場では推奨されないことだろう。
そもそも、レイヤーはアニメやゲームのキャラクターになりきってはいるが、二次元ではなく三次元で、生身の感情をともなった人間だ。勝手な行為を押しつければリアルな被害者となり得る。しかし串田さんはそんなことは気にしない。ブレることなく欲望優先。欲望を優先して生きるあまり、串田さんは定職についたことがない。都内の実家で暮らしているが、アルバイトを転々としてきただけ。その中には私がライターとして出入りしていた出版社のプレゼント発送などの短期アルバイトも含まれる。もちろん確定申告などしたことないし、ずっと親の扶養に入ってきた。
「商業カメラマンなんかなりたくないね。他人の結婚式とかガキとか撮りたくない」
中退だが写真専門学校で学んだこともある串田さん、かつてカメラマンを仕事にするのはどうかと提案したこともある。本音のところは知らないが、欲望のまま好きなものを撮りたいだけ、カメラでまっとうな仕事をする気はないと言う。
「まっとう」というのは串田さん、実はカメラで小金を得ている。昔はコスプレの写真を雑誌や同好のマニアに売ってお小遣いにしていた。
1990年代、まだ個人情報もコンプライアンスへの認識もゆるかった時代、「アクションカメラ」(1982~2003年)や「熱烈投稿」(1985~1999年)などの投稿雑誌に投稿すれば規定の謝礼が貰えたし、「じゃマール」(1995~2000年)などの個人向け売買情報誌などで売ることも可能だった。ネット社会が浸透する以前、はるか昔の話である。
「いまじゃファイル交換に重宝するくらいで昔ほどの金にはならない。掲示板で『神』なんて言われても一円にもならない」