ネット掲示板では、飛び抜けて素晴らしいことに対して「神」と呼んだり形容して褒めたたえる習慣がある。有名人のファンサービスが完璧だったことを「神対応」とSNSで呼ぶのもそのひとつだ。もちろん、見事な出来栄えの写真に対しても、その提供者を「神」と呼び賞賛する。串田さんもコミケのあとしばらくはアングラ画像掲示板で神と崇められる。言い方は妙だが「人気者」だ。とはいえ、会心の一枚が撮れても、おおっぴらに披露すると身バレするし金にはならないのでファイル交換や古くからの同好との取引が主だという。業者は一度怖い目にあったので売りたくないそうだ。それにしても、そんな女の子たちの画像を下心を隠しもせず待っているような連中に提供することで神と崇められて、嬉しいのだろうか。
「ネット乞食に与えてやってる感はあるよね。俺の創作活動で」
ネット乞食とは、みずからは何も発信せず、無料で画像や情報などを欲するだけのユーザーのことを指すネットスラングだ。それにしても、串田さんが被写体として素人の若い子、それもレイヤーにこだわるのはどうしてなのか。最近は、プロのアイドルや声優がモデルになる個人撮影会が増え、アマチュアでも参加しやすい。撮られるプロではだめなのか。もちろん、彼女たちには撮影料を支払わねばならないが、美しくみせる技術を持っているプロフェッショナルたちだ。
「あいつらプロは恥じらいがないからね、だからおおっぴらに露出するおばさんレイヤーも用はない。ウブなところがいいんだ。かわいそう? おかしいでしょ、彼女は直接被害にあってないし、俺は直接なにもしてない」
では、恥じらいのあるウブな女の子たちとの出会いなどを求めているのか?
「それはしない。俺は現場じゃ匿名であることに徹してる。有名カメコになったら最悪だから、名刺も渡したりしないし、名乗りもしない、身バレは気をつけてる」
実際はこれだけ長くカメコを続けていればレイヤーたちの間でも知られていそうなものだが、その他大勢のカメコならば目立つことはないのかもしれない。みな同じような格好で、同じような容姿だ。
それにしても、実家暮らしで定職に就かず、カメラと女の子の撮影に夢中の日々は充実しているだろうが、将来はどう考えているのだろう。串田さんとこんな突っ込んだ話をしたことないが、答えてくれた。
「実家にいるから生活には困らないけど、最近は母親がうるさいんだ、いい加減どうすんだって」
そりゃそうだ、母親の気持ちはわかる。串田さんの父親は2年前に亡くなったそうだ。葬儀は串田さんの弟が喪主となって済ませたそうだが、串田さんは親戚一同から葬儀の後、ネットスラングで言うところのフルボッコ、袋だたきにあってしまった。