◆私大から公立大に鞍替えした2校はどう変わったか

 2017年に公立化した長野大学は、志願者が前年(2016年)の706人から2998人へと4.25倍の大幅増となった。初年度の志願倍率は10.0倍と高人気。県内入学者は189人で全体の52.1%だった。

 だが、翌年になると、志願倍率は5.8倍に低下、県内入学者も33.3%に減少した。公立化により偏差値が急上昇し、入試難度が上がった影響かと思われる。2020年度の志願倍率は6.3倍。

 公立諏訪東京理科大も公立化前は定員割れが続き、2014年度は定員300人に対し入学者数202人という水準まで落ち込んだが、公立化初年度の2018年度は入学者数が365人にも達した。2020年度の志願状況(一般入試)は208人の募集人員に対し志願者は2455人で、志願率は11.8倍(後期日程だけだと31.8倍)の高倍率となっている。

 2大学ともに、公立化による人気化、入試難化が顕著となったケースである。

◆地方私大の公立化を手放しで喜べるのか

 地方私大が公立化することでブランド力がつき、全国から多くの受験生が集まる。その結果、偏差値が上がり、大学の「価値」が高まる。卒業生を採用する企業などの評価も変わる。まるでいいこと尽くしのようだが、果たしてそうなのか──。

 公立化問題には反対論もある。その最たるものが「税金による地方私大の安易な救済」という問題である。ネット上には「Fラン大救済」「ゾンビ大救済」といったキツイ表現も見受けられる。

 いま、日本には786もの大学が存在する(2019年度学校基本調査)。少子化(18歳人口減少)、大学淘汰が指摘されているにもかかわらず、前年よりも4校増加しているのだ。深刻なのは私立大学の定員割れ。私立587大学のうち194校、全体の33%が定員割れの状況である。特に規模の小さな地方私大が苦戦している。

 こうした大学を公立化することで蘇らせようという動きに対し、地元から反対の声が挙がったケースがある。新潟県の新潟産業大だ。

 1988年に旧新潟短期大学を改組する形で地元自治体が設立経費を負担する公設民営の4年制大学として開学した。長らく定員割れが続き、2014年に柏崎市に公立化を要望した。市議会では「大学は市の財産。廃学になったら市の損失」との声も出たが、事業計画に独自性がないなどの理由で、2018年2月、最終的に市が断ったのだ。公立化に伴う市の財政負担もネックとなったようだ。

 公立大学の財政は、授業料収入等の自主財源のほかに、国から地方交付税交付金(運営費交付金)や設置者負担などで賄われている。平成29年の全国の公立大学の経常費予算額に占める自主財源額の割合は40.4%。つまり残りの6割が地方交付税交付金を含む設置者負担となっているのだ。そうした背景があるから「税金による安易な救済」といった反対論が出てくるわけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン