このように、一歩、離れて眺めれば、いまの日本の医療にはおかしな問題がたくさんある。その多くは、本書で指摘されているように、「経済性や効率が最優先」「すべては自己責任」という価値観に基づいて、社会の制度が設計されていることにある。「困ったときはお互いさま」「カゼを引いたときは休める」などあたりまえのことを思い出せばよい、と著者は言葉をかえて何度も呼びかける。
マスクの買い占めから中国人差別までが起きている新型ウィルスについても、本書で述べられているインフルエンザ対策がそのままあてはまる。すなわち、「調子が悪いなら、自宅で安静にし、人に接触しない」。落ち着いて、ひとへの思いやりを忘れずに、社会全体の健康を守りたい。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号