芸能

『スカーレット』スピンオフ放送 林遣都が気の毒で仕方ない

林遣都が熱演も

 朝ドラが行なった新たな試みだが、残念ながら裏目に出ていると言わざるを得ない展開となっているようだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)も、残るはあと一ヶ月程。今まさしく終盤、最後の盛り上がりを見せる時期のはずですが、今週いきなり「スピンオフ」的内容が放送されて、びっくりした視聴者も続出。主人公・喜美子は姿を消し、舞台は喫茶店・サニーへ移動。百合子(福田麻由子)と信作(林遣都)夫婦のエピソードを軸にしていました。

 これまでも朝ドラの本編が終わった後、主人公とは別の人々のエピソードを中心にしたスピンオフが放送されるケースは多々ありましたが、本編中に一週間もスピンオフが挟まれるのは前代未聞です。前例は無くとも、「思い切ったチャレンジ」をするのは悪いことではないかもしれません。しかも今回は脚本家まで変えての試みという。いったいどんなユニークな展開が待ち受けているのか……期待しつつ見てみると、思い切った試みのわりにその効果が見えづらい。

 コント調を好む視聴者からは歓迎されているようですが、ストーリーを味わうドラマ派視聴者からは、制作側の手抜きではないか、という手厳しい指摘も出ています。過去に見た回想シーンも多く、モヤモヤが膨らんで、「なぜこれを今やるのか」という疑問を抱いてしまった人も多いのではないでしょうか。

「過去の映像を使い過ぎていて退屈」「スピンオフなんて体の良い言い方してるけど放送事故級の誤対応ではないか」という感想も目にしました。が、それ以上に注目したい点。それは、出演者がこうも「気の毒がられる」朝ドラは初めてでは、ということです。

「いい役者をこんな茶番に使わないで欲しい」「役者さんに悪いイメージ付いてしまって悲しい」「林遣都くんも大島優子さんももったいない」「俳優さんたちにはお気の毒というしかありません」といった感想があちこちで見られます。

 この一週間、最もスポットが当たったのは林遣都さん演じる信作。一緒に暮らす両親が経営する喫茶店で親のかわりにマスターとして店に出た。しかし、信作はコーヒー豆を挽かず直接豆にお湯をかけようとする。……コント以前に、もうあり得ない幼稚さで、脚本が壊れてしまっています。

 その他、描かれた信作のエピソードといえば、若い頃モテて女の子たちを振った。柔道が弱い。信作という人物があまりに薄っぺらい。それをコント風に演じるよう要請されている林さんに対して、同情の声が集まるのもなるほど、当然のことかもしれません。

 信作の演技を見ていると、見ているこちら側が寒くなり、目そらしたくなる。演じる林さん自身「これでよいのだろうか」という躊躇や迷いを感じながらやっているように思えてしまう。役柄に没入しノって演技しているようにはとても見えないのは私だけでしょうか。

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