高校生から本格的に俳優活動を始めた柄本。役者として生きていくのを明確に感じたのは、結婚をしてからだと話す。
「結婚してから漠然と“この仕事を一生続けていくんだろうな”と思ったんです」
2012年に女優・安藤サクラと結婚し、2017年には第1子にも恵まれた。2018年には『キネマ旬報ベスト・テン』で、主演男優賞・主演女優賞を史上初となる夫婦揃っての受賞となり、公私ともに充実している。一家揃って活躍する役者だが、柄本自身が役者として指針とする言葉は、現役落語家として唯一の人間国宝・柳家小三治の言葉だという。
「『芸なんてできる限りのことしかできないんだから、あとは人です』という小三治師匠の言葉が印象的で、心に刻んでいます。きっと表面に出てきていることはあんまり重要ではなくて、人はその人の本質を見ている。何が“ちゃんと”で“地に足が着いている”のか、答えはまだわからないけれど、人として自分を鍛えることが一番大事なんだと肝に銘じています」
作品に出演する際の意欲も、役柄ではなく現場を共にするその人への興味からわくという。
「この監督の作品に出たい、この役者さんと共演したい、という動機なんです。藤田まことさんとも共演してみたかった。最近は家で『剣客商売』や『必殺仕事人』の、まことさんばかり見ているんです。いやぁ、いいっすねぇ。かっこよくて洒脱だし、ライトで、声がまたすごくいいんですよ。ウチのおやじ(柄本明)も、というか乾電池(柄本明らが結成した『劇団東京乾電池』)の共通言語として『声を探す』という作業があるんです。その時その時の役に合うぴったりの声をみつける。そう考えると役者さんは声、なんでしょうね」
父も母も役者で、幼い頃から芝居が中心だった家族の中で過ごしてきた柄本ならではの役者論だ。『知らなくていいコト』ではやわらかく温かみのある柄本の声に癒される人が続出しているが、自身については「振り返ってわかることはあっても、役を生きている最中にはまだ全然わからない」という。いかに人を磨き、声を探すか。自分の方法を試行錯誤していると語るも、もがいているその表情は生き生きと明るい。やはり柄本は根っからの役者なのだ。
※女性セブン2020年3月12日号