五輪前の活況も一転、厳しい経営を強いられているホテル業界

五輪前の活況も一転、厳しい経営を強いられているホテル業界

 2017年に筆者が取材した中でインバウンド率をコントロールしていたホテルは、今回の新型コロナウイルスによる影響が少ないと話すホテルが多いことが判明した。まだ調査数は少なく、もちろんエリアによりけりという面もあるが、概して観光地の旅館やホテルよりも都市型ホテルやビジネスホテルのほうが影響が少なかったのは、顧客層やターゲットの違いによるところが大きいのかもしれない。

 全国各地を旅する旅行ジャーナリストの知人は、「正直、外国人が多いホテルは以前から避けてきた」といい「以前から日本人、特にビジネスマンを大切にしてきたホテルでは、いまのこの時期でも実際日本人ばかり見かける」と語る。さらに、「外国人ばかりいたホテルは、(宿泊料金を)とれる時には料金を上げまくっていた」「そういうところは気分的に使いたくない」と続けた。

 確かにこの言葉は最近筆者がホテルで見た光景とリンクする。日本人の宿泊客を大事にしてきたホテルは、ビジネスマンへのベネフィットに鑑み、会員プログラムを手厚くしているホテルも多い。ゆえに入会金を要するチェーンもあるが、質の高いお得なサービスで一定数のリピーターを見込める利点はある。

 いずれにせよ、今回の“コロナショック”の余波で、オリンピックのホテル需要についても一部陰りが見えてきたようだ。

 つい先頃までオリンピック需要に沸いたホテル業界であるが、「満室だった会場周辺のホテルが確保できた」という観戦予定者の声や、旅行代理店からホテルへ客室が戻されたという情報もある。期日が近づくとキャンセルが出てくるのはホテル予約の定石ではあるものの、新型コロナの影響があることは確かだ。いずれにせよ、オリンピックのホテル予約については定期的な情報確認が肝要だろう。

 窮地に立たされているホテル業界だが、今後もホテルの開業は増える。前述したように、すでにスタートしているプロジェクトは、巨額の予算が注ぎ込まれるだけに途中でストップできないからだ。

 主要9都市(東京、大阪、京都、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡、那覇)における2019年から2021年の供給客室数は約7万8000室とされる。これは2018年末のストック数の24パーセントに相当するとされる(事業用不動産サービス会社CBRE調べ)。いまこの時期だけに、改めて驚愕の数字に映る。

 かつて、脳科学者の茂木健一郎さんは、インバウンド頼みの経営手法について、「一本足打法」という表現で警鐘を鳴らしていた。その打法が通用しない今、ホテル業界はただちに需要が低下し続けた際の試算や、実行に移せる具体的な対応策を練らなければ、ますます苦しい経営を迫られることになるだろう。

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