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肺がんは「切れるうちに切っておく」選択が説得力を増す

肺がんは「切れるうちに切る」

 健康診断でおなじみの胸部X線検査(レントゲン)より、高精度に肺がんを見つけられるとして注目を集める胸部CT検査(低線量CT)。

 今年、世界的な医学誌『ニューイングランドジャーナル』に掲載された論文では、低線量CTを1~2年ごとに5年間継続的に実施することで死亡率が有意に低下したという。

 通常、低線量CTで腫瘤が見つかれば、まず気管支鏡(肺スコープ)で組織を採取し、顕微鏡で病理診断を行なう。

「この段階で手術することもあります」と指摘するのは、ときわ会常磐病院の尾崎章彦医師だ。

「腫瘍が5mm~1cmと小さい場合は通常なら定期的にCTを行ない増大がないかをチェックしていきます。しかし、肺がんは予後が悪いため、肺がんが『強く疑われる』という状態なら、診断と同時に手術をしておこうという考えです」

 以前は開胸手術が基本だったが、近年は低侵襲の手術も増えつつある。

「胸腔鏡手術や小開胸手術といった負担が少ない手術が、全体の70%に達するといわれています。ただしこれらは医師の技量による差が出やすい。熟練した医師だと出血が少なく回復も早いが、残念ながらそうでない場合もある」(尾崎医師)

 前立腺がんのように、進行が遅く放置しても安全なため「切らなくてよい」がんがある一方、肺がんは手遅れになると「切れない」ケースが増えてくる。

「がんが肺の外に広がった『ステージ4』になると、手術をしてもがんを取り除くことができないと判断する。患者が手術を希望しても、通常医師は抗がん剤や放射線治療を勧めます」(尾崎医師)

「切りたくても切れない」という状況を考えると、肺がんについては、「切れるうちに切っておく」という選択が説得力を増す。

 検査後、手術するかどうかは病気の種類や個々人の状態によって変わってくるということを知っておかなくてはならない。

※週刊ポスト2020年3月13日号

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