さらに小野寺氏は、「政権の不正に対して、告発するか忖度するか、悩みまくる官僚の役を、アツく繊細に演じている」と松坂の演技力の高さについても評価する。寺脇氏も、「人気俳優でありながら政権批判のメッセージを込めた映画に出ることはハードルが高い。よく出演を決意したと思う」と同様の見解を述べながら、その裏事情について次のように続ける。

「最近、こういった映画への出演を事務所が忖度して拒否するという風潮が広まってきている。社会派映画だけじゃなくて、かっこ悪い悪役とかもそう。事務所が役者のイメージを守ろうとして、出させないようにしている。でも本当はそういう役柄のほうが、俳優として成長できるし、やりがいもあるものなんですよ」(寺脇氏)

 リスクをともなう役柄に挑戦してこそ優れた俳優へと成長する。LiLiCo氏は、まさにこうした挑戦によって松坂の魅力は発揮されるようになった、という。

「松坂桃李さんはちょっと悪い役をやるようになってから一気に変わりましたよね。そこから役者魂の深堀りみたいなものの勢いが止まりません。ハンサムなのはみんな知っていること。その奥にある繊細な演技を見てほしい。役が松坂さんにまとわりつく様になりました。いい年の取り方をしていて、つい彼が出ているものを先に見に行きがち。あと松坂さん、手がとても綺麗です(笑)」(LiLiCo氏)

 以上、本稿では、日本アカデミー賞にノミネートされた俳優のなかから“勝手に最優秀賞”として、『新聞記者』で主演を務めたシム・ウンギョンと松坂桃李に賛辞を捧げることとする。なお、『新聞記者』は独立系映画会社のスターサンズが制作・配給している作品だが、今後も大手映画会社のものだけではなく、より多様な作品が日本アカデミー賞の候補に挙がることを願ってやまない。

●取材・文/細田成嗣(HEW)

関連記事

トピックス

事件に巻き込まれた竹内朋香さん(27)の夫が取材に思いを明かした
【独自】「死んだら終わりなんだよ!」「妻が殺される理由なんてない」“両手ナイフ男”に襲われたガールズバー店長・竹内朋香さんの夫が怒りの告白「容疑者と飲んだこともあるよ」
NEWSポストセブン
4月は甲斐拓也(左)を評価していた阿部慎之助監督だが…
《巨人・阿部監督を悩ませる正捕手問題》15億円で獲得した甲斐拓也の出番減少、投手陣は相次いで他の捕手への絶賛 達川光男氏は「甲斐は繊細なんですよね」と現状分析
週刊ポスト
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト